新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

公共インパクト債券、とでも言うのかな

英語ではSocial Impact Bond、というそうです。The Economist 2月23日号のFinance and economicsの記事に出ていたのですが、かなり興味深いビジネスモデルだと思われたので、今日はこれについて書きます。

今、とある社会的な問題があって、社会にはそれを解決する高いニーズがあったとします。問題解決に従事するNPOや企業などの事業主体が民間投資家から資金を受けて日々の問題解決に従事し、解決度をあらかじめ決められた成績表で評価します。投資家には、この成績に比例したリターンが税金から支払われる、という仕組みです。

結果を出す事業主体にはカネが集まり、社会のカイゼンが進んだだけ投資家にはリターンが増えるということになります。当然ながら、おカネを使われた部分には民間のオーナーシップが入ることにもなるのですが、債券保有の約定に「勝手なことはできない」ような縛りをかけておけば公共財が広告で汚されることも予防できるものと思われます。

実際にロンドンでは、ホームレスの削減や社会復帰という事業がこの方式で実施され、効果を上げているのだとか。日本でもたとえば保育所待機児童の解消や社会インフラのメンテナンスなど、優先度の高い社会事業のうち、直接財源で十分に賄えないかもしれないものについて、民間の資金を導入するという方式は検討されてしかるべきではないかと思います(同時に、自らの権益を侵されるリスクを背負わされる役所からは絶対に出てこない発想だろうとも思いますが)。

社会的な問題は多くても解決のための財源がない、という悩みを抱えていない公共団体は、国の内外を問わず極めて珍しいのではないかと思うのですが、世の中にはどこかしらに滞留しているキャッシュがあるのもまた事実だろうと思うのです。

税金の使途として直接的な事業資金の負担に加えて、民間資金を動員するための対価部分を賄うと言う、相当程度柔軟な発想と、おそらくはさまざまな法規制の書き換えが必要になるかもしれない話ではありますが、日本では今のままだとやたらと借金ばかりが増えて国の閉塞感は高まるばかりであろうと思われます。他方で理財局をはじめとする資産管理官庁の資産リストは増えるばかりという状況だろうと思うのですが、債券化を通じて民間と資産の持ち合いを促進する、といったような発想があっても良いのではないかと思うのですが、如何でしょうか(あとはソロバンの問題かな)。

それ以外に国債と何がどう違うの?と聞かれそうですが、①小規模なものを含めた民間の柔軟な発想が導入できる、②事務手続きを証券会社など民間に委託し、行政の肥大化にブレーキがかかることが期待できる、③優先度が高くても行政機関同士の調整が進みにくい分野について、公共事業とは切り離した実施が可能になる、といったようなプラスの面は想像できるように思います。反面で社会的事業は「やっぱり政府に直接やってほしい」というような保守的な考え方も(たとえば医療関係など、おそらくは信用面から)存在することと思いますので、言うほど簡単な話ではないのかもしれませんが、最低限検討してみる価値は大いにあるように感じます。いや、もうすでにどこかで検討されている話かもしれませんね。