新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

一寸忘れてるうちに

2月23日号のFree exchangeは、二酸化炭素排出権取引の現状と近未来、そして議論されることになる可能性の高いオプションとしての国債炭素取引税に関する論評記事です。世銀の担当者とシンクタンクの研究者による論文が参照されています。

震災もあって、日本では一寸話題性が低下しているようなところもありますが、気付いてみれば排出権取引市場自体はオーストラリア、中国そして韓国でも整備されつつあるのだとか。そうすると各国で取引価格にばらつきが出てくること、それが貿易に影響する(排出権価格が高い国からの製品輸出は競争力をそがれる)こと、その対策として輸出入に課税するというような話がでてくる可能性があることが指摘されています。記事ではその複雑さや先進国と途上国の排出量の違いなどに触れつつ、制度設計が難しいものになることを論文も指摘していると伝えています。

かたや自由貿易を堅持しつつ、こなた公共財としての環境への配慮を織り込んだ制度設計を追求するというのは、言うのは簡単ですが実際には大変な作業なのだろうなと思います。各国間の利害調整も複雑で、国際交渉における議論は沸騰することになるわけで。

京都議定書の延長に参加しなかったということもあって、日本がこの問題に何を言うか、についての国内議論は至極低調なままであるように感じますが、この件は一寸忘れてるうちに議論は進んでいるという事例かと思います。知らないうちに大きな枠組みが決まり、それに従わないとゲームに参加できないと言うような流れになる可能性もあると思うので、特にメディアには世界の動きをしっかりモニターしていてもらいたいと思います。