新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

愛のない結婚

3月23日号、Leadersのトップ記事はキプロスの経済危機と、再びユーロを襲う信用不安の可能性に関する記事だったのですが、ギリシャ危機の発生以来ここしばらく議論が続いてきた問題だけに、The Economistの洞察も深く、そして切れ味のよい議論がなされています(技術的に褒めているというだけで、問題の深刻さは変わりません)。

 

そもそもキプロスは島を二分するトルコ系キプロスとの軍事的な問題から、潜在的には大きな外貨獲得資源である観光開発が十分に進まず、ユーロ圏にあってもGDPが230億ドルしかない(ということは2兆円ちょっとでして、たとえばヤマハ発動機さんの売上高と同じ水準です)小国であり、今回の危機も取るに足らないものと見られていたようです。

 

それが、ユーロ圏からの支援が金額的に十分とは言えないことに対して提案してきた対策としての「預金者からの強制負担義務付け」が、他のユーロ圏諸国に波及することへの警戒感や、キプロスのゆるい銀行規制に乗じて多額の預金を保有していたロシアの富豪たちにとってのショックとして伝えられる中で、しだいにおおごと扱いされるようになってきた、というのがThe Economistの読み解きです。

 

そもそもユーロ圏諸国に対してキプロスが支援要請を行ったのはもう9カ月も前になること、そして170億ユーロの支援要請(年間GDPと同額水準ですね)に対して100億しか出せないと言ったユーロ圏側の反応が不十分だったことが預金者からの負担を議論することにつながったことなど、ユーロ圏の動きは遅くかつ不十分なものであるとして、ユーロ圏の対応に疑義を呈し、ドイツの選挙など政治日程による影響にも注意を払いながらも、The Economistは「今やユーロは、離婚の方がコストがかかることのみを理由として続けられている愛のない結婚と同じ」という洞察をもって結論としています。そうか?という反論は当然あると思いますが、第一者の心情としては偽らざるものなのではないかな、と感じます。