新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

なるほどね、という話

8月3日号のAsiaには、先ごろ行われたカンボジアの総選挙に絡んで窺える、国際政治の微妙な綺について興味深い記事が出ています。選挙そのものは若者の熱気がもたらした野党の躍進が目立ったわけですが、野党党首が選挙の不正について訴え出るなどしたため、最終的な決着は8月中旬までわからないらしいです。それでも選挙自体はおおむね公正に(最低限、選挙運動期間中はそうでした)行われた気配が強く、大きく後退したとはいえ与党は多数を何とか維持するのではないかと思います。

で、ところが。

依然として共産党政権にあり、カンボジアのような自由選挙とは縁がないベトナムについて、アメリカは最大限の協力を申し出たのに対して、民主的に政権交代すら視野に入る自由選挙をまがりなりにも実施したカンボジアに対するアメリカの対応は極めて冷淡なのだとか。理由は、といえばベトナムはアメリカにとって対中国戦略のかなめとなる協力相手国で、逆にカンボジアは中国にとって域内の橋頭保ともいえる親密な国だということで、そのあたりの関係性が大きく作用したのだろうとのこと。

先だって、ASEAN諸国を訪問した安倍総理がフィリピンなどに対して「基本的価値観と多くの戦略的利益を共有する戦略的パートナー」なので支援を強化する、とのたまった一幕がありましたが、このセリフを注意深く読み解くと、民主主義に基づいて政権交代可能な選挙を行ったカンボジアよりも共産主義のベトナムを取ったアメリカの考え方も、なんとはなしに透けて見えてきそうな気がします。