新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

起業のとき

8月31日号のBusinessには、アベノミクスの3本目の矢といわれる民間の力をどのように強化し、どのように経済再生につなげるかについての解説が出ています。それによると、起業促進とならんでホリエモンに代表されるカムバック組への機会提供や、新産業創出のための企業家育成などが言われています。

これは、The Economistこそ好意的な書きぶりをしてくれていますが、言うほど簡単な話ではないと思っています。方や高度化した経済と、それをきめ細かく支えてきた行政システムが厳然と存在し、こなた人口減少と高齢化がその成長を阻むという環境の下にあって、新たなビジネスの種も、起業させたからそれでなんとかなるというものではないからです。それでも、まず起業しないことにはなんともならない、という点はそのとおりでしょうし、であれば政治の役割として安倍政権のスタンスは間違っていないというか、大枠においてそれしかない、というのもそのとおりかな、と思える要素が少なくありません。

The Economistが言うように、このまま経済が悪化して破たんを迎えるとしたなら、人々は好むと好まざるにかかわらず自らの手で「起業」しなくてはならなくなるとするならば、まだなんとかなる今のうちにスタートさせたほうが合理的であるということなのだと思います。

いささか気になるのは、そのような流れに沿って少しずつ実を結びつつある多くの新興企業がIT関係に限られるという点ですかね。確かに芽が出やすく、実になりやすい分野ではあると思うのですが、それ一本に頼ることの危うさがあるのでは?ということです。

例えば農業、あるいは教育、もしくは環境分野など、さまざまな新しい取り組みがなされている実態はあるわけですが、今のところそのいずれもキャッシュフローの世界においてIT企業を凌駕するだけの実績を上げていないというのも事実だろうと思われます。ほんとうに起業が進むと言えば、これらの芽がどこまで伸びるのかという視点が大事なのではないかと考えています。

「3本目の矢」の成否をどこで判断するかと言われたら、大手企業の黒字化やIT企業の成長、給与水準や雇用統計など、さまざまな指標はこれありとして、統計的には表しにくいかもしれませんが、多くの異なる分野における新規参入企業の成功度、みたいな視点が欠かせないのではないだろうかと思っています。