新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

圧縮と解凍

ネットでは10月26日号の記事が流れています。Leadersは、アメリカ経済と法人税の話、慢性化したユーロ危機と企業債務の話、そしてThe Economistとしては珍しく韓国の話で始まっています(今朝からまだこの3本しか読んでません)。韓国については今週号の特集記事で詳細な分析がなされているようなので、そちらもぜひ読んでみたいと思っているのですが、ざっと目を通して思ったことを3つほど。

まずアメリカ経済と法人税ですが、かの国が大枠で金持ちへの課税を強化する方向にある中で、先進国の中では法人税が高いことについての議論は確かにこれまであまり聞かなかったように思います。新興国を中心に税率を引き下げる国が多い中、気が付いたら4割を超える税率を課しているのはいまやアメリカと日本くらい、と言う状況です。元来The Economistはその主張として、経済活動の主体たる企業に課税するのではなく、その益を得る株主、そして従業員に課税すべきというスタンスなのですが、そうするといわゆる社用族は死に絶えるでしょうし、社外流出による課税を避けようとする動きは内部留保と新規投資へと向かうことが予想されます(それが成功すると、どのみち株主の納税額は増えるのですが)。そのほうが健全な資本主義経済である、という考え方は一本筋が通っています。

つぎにユーロ危機の慢性化について、特に南欧諸国は深刻なようで、多い国では半数もの企業が税引き前利益で利払いを賄えないという事実は抜本的な不良債権対策が求められること以外の何物でもありません。ここで生きるのは日本の経験ではないかと思うのですが、The Economistの論調では「日本は90年代にゾンビ企業が沸いて出た国」、と言った程度の見方以上のものではありませんし、日本でも、たとえばJICAが欧州危機に専門家派遣を検討しているといった話は寡聞にして聞きません。ヨーロッパにはプライドがある、と言うような話なのかどうかわかりませんが、日本も日本で、途上国に対しては知見の開示に積極的な反面、もっとも自分の知見を活かせそうな経済危機において黙っているばかりというのは、いささか情けない気がします。

さて韓国ですが、過去50年の「圧縮された成功体験」が生み出した様々なひずみにThe Economistは光を当てようとしているようです。Leadersでは18歳で決まる人生の勝敗(受験戦争)について触れられていましたが、大器晩成型の人材を切り捨てるこのシステムは、結局小さく縮こまった国しか作らないのではないか、との鋭い指摘です。似たようなシステムを長く続けた日本もまたその批判から逃れられないと思うのですが、「以て他山の石とすべき」考え方だと思いますね。教育改革は、なにも小中高大で終わりではなく、むしろそれ以降の在り方を基本として議論を仕切りなおしてみてはいかがでしょうか?大きくのびやかな国を支えるべき30~40代の人材はどうあるべきで、そのための教育は何歳くらいまでを視野に入れて議論すべきなのか?結構興味深い頭の体操になりそうです。