新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

息詰まるほどの

10月26日号の特集記事はThe Koreasということで、タイトル通りなら南北朝鮮についての詳報が期待できるところではあるわけですが、北朝鮮の詳しい情報については、さすがのThe Economistにとっても簡単に手に入るものではなかったようで、記事の中身は主に韓国についての分析が中心になっています。

それでも軍事的な脅威としての北朝鮮に関する情報は豊かですし、「なぜ脱北者が韓国に失望するのか」と言った視点でも議論を尽くそうとしていることなどから、読後感としては韓国を中心とした書きぶりではあるものの、北朝鮮に関する考察も若干以上は含まれているのかなと言う感じです。

さて、韓国に関する洞察ですが。

日本に比べて定年退職の年齢が低く(56歳~58歳)、シニア層は元気な割に活躍できていないこと、女性は文化と経済のはざまで子供を産まなくなっており、それには教育コストの高騰や成功モデルが限定されることが影響していると考えられること、財閥を中心とした経済ヒエラルキーは新しいビジネスの台頭を許さず、過去50年の経済成長に比べると良いキャリアチャンスの数が大変限定的なまま推移していること、世界で注目されているK-popについても大手プロダクションが業界を取り仕切っていて、新しい芽が出るのは大変難しいことなどが書かれています。

人と異なること、について社会がそれを排除しようとするような感覚は、欧米に比べれば日本にもかなり強く存在しているような気がしますが、その中にあって流れに逆らいつつもなんとか生きてこれた私からすると、競争第一主義の空間で自由を縛られつつ生きてゆくのは本当に嫌だろうと思ってしまいます。

特集記事を通読すると、結論的には非常に高い集中力と極めて限られた評価軸とがあいまって、国そのものが息詰まるような内向きの競争を演じているということが分かります。脱北者は、その不条理かつ不合理な困窮生活に耐えられず北朝鮮を脱出して韓国にやってくるようですが、そののちに知ることになる苛烈な競争に、元の暮らしとの大きな違いを感じているようですね。ごく限られた成功モデルのみをめざした息詰まるほどの競い合いが、国としての行き詰まりを招くようなことのないように、大きなお世話かもしれませんが、祈ってしまわずにはいられません。