新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

見えていてもできない

ネットでは11月2日号が流れています。

Leadersのトップ記事は、11月上旬に予定されている中国の共産党中央委員会第三回全体会議に向けて、習近平政権が目指すべき経済改革の方向性に関する論評となっています。

間接的な表現ながら、国営企業の改革立ち遅れは富の分配をそのよりどころとしてきた共産党政権にとって脅威となることを述べたうえで、加速する高齢化を視野に入れつつ、国家社会保障基金(年金機構みたいなもの?)に国営企業の経営をまかせてはどうだろうかという提案がなされています。また、農村部と都市部の格差について、よく日本で報道されるのは戸籍問題(農村戸籍都市戸籍に書き換えられないことによる農村部出身労働者の不利益)ですが、The Economistの提案は農村の土地管理を都会並みにして、土地売買の自由化や担保設定権の導入をすることで、農村が自らの資産価値を使ったビジネスを始めやすいようにするというものです。

具体的な提案の適否には議論のあるところかと思いますが、14億人が超スピードで高齢化する流れの中で、非効率なシステムを抱えた国営企業は温存され、安い人件費で勝負してきた製造業は急速にその優位性を失いつつあるのが現状であるところ、これまでに獲得したキャッシュによるインフラ投資を進めることで、なんとか国際的な優位性を保つというのが現在中国が取っている経済政策の枠組みだということかと思います。その流れの中で、農村改革は置き去りにされてきたということなのでしょう。

非効率な国営企業の改革は、日本の国鉄を例とすればわかりやすいと思いますが、大変な労力を伴うものであることは論を待ちません。繁栄と拡大のための目に見えるインフラ投資とはあきらかに違う質の投資を、もしも習政権が実現し成功させ得るとすれば、大方の予想よりもずっとスムースかつエレガントに、中国は現代国家へと変貌してゆくことと思います。問題は、共産主義もしくは共産党の衣鉢を継いだまま、習政権がそれをやれるのか?ということかと思いますが、いかがでしょうか。