新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

圧倒的であるということの意味

11月23日号の特集記事はアメリカの外交政策についてなのですが、好調な国内経済とは裏腹に、内政・外交の両面で試行錯誤を続けるオバマ政権にとって、超大国として圧倒的な外交力を誇ってきたアメリカの今後を占ううえで多くの懸念材料があることを記事は改めて確認してくれています。

特に中国の台頭について、The Economistは意外と冷静で、アメリカとの競合を求めているわけではなく、当座はブラジルやトルコ、インドやインドネシアもそうであるように、「体制の中での台頭」「地域における挑戦」の域を出ないだろう、との分析です。

関連して思うことは、ヘゲモニーにはそれなりの哲学が求められるはずである、という点ですね。地域に覇権を問う上で、たとえば戦前の日本が示した哲学も相当幼稚なものだったと思うのですが、今の中国政府にはその提案力も提案資格も備わっていないのではないか、というのが私の見方です。中国政府が繰り返し「中国は覇権を求めない」「中国は平和を希求する」と発言している反面で、それでは地域においてどのようなビジョンを求めようとするのか、またそのビジョンは周辺国と共有しうるものなのか(どうやって?)、なかなか表には出てこないことがその表れではないでしょうか。存立基盤としての共産主義をいまだ引きずる中、経済的繁栄とのつじつま合わせに汲々としている中国には相手の視線に立つ余裕などないのではないか、ということです。

日本としては、アメリカに依存するばかりでなく、さしあたりアメリカと同盟国がもつ経済・外交の優位性による便益を最大限尊重しつつ、地域の在り方を積極的に提案してゆける視野の広さが求められるのではないだろうかと思いますね。そこで検討するに値するビジョンは「中国の段階的民主化を通じた域内の不安定化回避」ではないかと思っているのですが、いかがでしょうか。