新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

第三の矢が向かう先とは

5月3日号のBusinessには、日本のメディアにはさほど注目されていないかもしれない自民党企業統治政策に関する取組みについて、強い期待を込めた記事が載っています。

曰く、オリンパス事件を嚆矢として社外取締役の役割や、取締役会が果たすべき企業統治に関する役割についての問題が提起されていたところ、安倍政権は取締役の経営監視義務や社外取締役の起用促進について積極的な政策を取り、これまで抵抗してきた経団連を譲歩させ、取締役会の役割強化と社外取締役の増員に向けた新たなルールを制定することになった、というのがその趣旨です。その結論の裏には、そもそも投下資本利益率が欧米(15%前後)に比べて半分以下(7%前後)という日本において、特に大企業の企業統治能力を改善することで投資収益率も改善されるはず、といった期待が透けて見えます。

これは考えてみれば重要な話で、アベノミクスの第三の矢はなにも法人税減税だけではなく、たとえばこういった形で企業経営の体質強化を図るという要素もしっかりと織り込まれるべきであろうと思われます。

大企業間の株式持ち合いなど、長年日本流の閉じた経営環境にいらだちを隠さずにいたThe Economistからすれば「革命的な」変化である、ということなのですが、そうなると社外取締役を引き受けるに足る監査能力・経営能力を身に付けた人材の育成が急務ということになるのではないかと思われます。振り返って現在の日本の教育制度を見るに、大学・大学院はその任にあたわず、社会人向けビジネススクールでも十分とは言えず、はたしてどこでそのような人材を手当てしようとしているのかがちょっと見えません。経団連あたりにその気があるのなら、本格的な社外取締役育成制度を検討してみるというような対応も面白いのではないかと思います。手をこまねいていると、それがまたぞろ役人の天下り先となってしまうような換骨奪胎も起きかねないでしょうし(個人的には必ずしもそう思っているわけではありませんが、なにぶん日本にはそういった過去があるので)。

強いものが勝つのではなく、変化に適応したものが勝つ、とはよく言われる言葉ですが、これも含めた環境の変化にしっかりと適応できるような柔軟性を持った企業経営であってほしいものだと思います。