新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

インド新政権への期待

既得権の重しは、ときに国のダイナミズムを失わせるほどで、民主主義政治のありがたいところは政権交代プロセスを経てそれを一掃できることであろう、という経験は、2009年の日本で私たちが実感したところであったろうと思います。選択肢の貧弱さは、結果的に見れば大きな誤算だったかもしれませんが、既得権の重しをある程度外すことができた結果として、たとえば自民党政権復帰後もTPP参加への道が閉ざされることはなかったわけで。

枕が長くなりました。The Economist5月17日号のLeadersには、民主国家で行われる世界最大の国政選挙となったインドの総選挙についての記事があります。なにせ有権者数が数億人という、桁違いの規模でしたが、正式な開票結果を待たずとも、インド人民党(BJP)の政権復帰は確定的であるとの報道が大勢を占めていると思われます。

インドを高度成長から安定成長へと導いた国民会議派マンモハン・シン政権でしたが、さすがに長期政権の弊害としての成長鈍化は避けることができず、再びBJPに政権を譲ることになる模様です。

既得権から改革を拒む勢力というのはどこの世界でも存在するもの、らしいのですが、The Economistが注目するのは「銀行」です。新政権にとって課題の第一は腐敗した銀行の改革であろう、というのが同誌の読み解きです。既得権にしがみつくための言い訳ばかり、と辛らつな批判を隠しません。第二の課題は不況下の物価高をどのように是正できるか、そして第三は新たな雇用創出を加速できるかだとしていますが、様々なところに張り巡らされた非効率な国営企業ネットワークと彼らの既得権を保全するための法的枠組みを、自己破壊よろしく変えてゆかなければならないのが新政権の役目であると言わんばかりの書きぶりです。

ここしばらく、成長の鈍化が国としての限界を思わせるようなイメージが強かったインドですが、外国投資家の目がふたたびインドを向く日は遠くないのかもしれません。