新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

ソニーの苦悩

9月20日号のBusinessには、ネットワーク機器の製造からクラウドコンピューティングを含むITビジネスに打って出ることで、「2020年までに10倍の成長」を目指す中国のHuawei(華為)と、今期無配に陥ったソニーについての記事が並んで出ています。

かたや昇日の勢い、こなたかつての名門が苦しみの中にある、という比較は大変象徴的なものですが、シンボリックな話と言う以上にこの二つの記事は深い示唆を提供してくれていると思います。

一つは、企業経営のあり方と言う意味でソニーが取りつつある対策について。パソコン事業の売却に見られるように、明らかに「取るべきアクション」について、ソニーは迅速な対応を取っている、という評価が示されていますが、結果としてこれまでと同じようなビジネスを展開するというのでは、企業価値を高めるための施策としては不十分と言われてもしかたないわけで。The Economistは、JAL再生時に稲盛和夫氏が取ったドラスチックなリストラを例に出して、そのような対応が求められるとしていますが、もしもソニーが稲盛氏に学ぶべきところがあるとすれば、それはリストラと言うよりも、厳しい中にあって希望を忘れない、そのスタンスにあるのではないかと思われます。言ってみれば企業理念みたいなものですが、確かに今のソニーがどんな幸せを追及しているのか、クリアには見えてこない気がします。

二つ目は、成長機会がどこにあるかという話で、Huaweiの目指す総合的なITビジネスは、今や世界の途上国を中心に安いネットワーク機器の提供でデファクト化した感すらある同社の経営基盤を考えれば、実現性の高いものであろうと思われます。そのような切り口を、ソニーが探すとすればやはりそれはソフトの世界ではなかったかと。IBMがタイプライターを手放し、パソコンを離れたように、ソニーがテレビや家電から離れる流れがあっても不思議はなかったところ、いまだその流れを掴めていないことが、同社の苦闘に関して象徴的な現象といえるのかもしれません。自らを変える覚悟と投資、そしてそれを決断できるトップの存在は、いずこの大企業にとっても決して簡単なものではない、ということをこの二つの記事は示してくれているように思います。