新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

遠くないかもしれない夜明け

10月4日号、表紙とLeadersのトップ記事は、香港の行政長官選挙をめぐるデモについてのものですが、それとリンクする形で中国に関わるもう2つの記事でもこの件が取り上げられていて、The Economistが示す関心の高さが窺えます。確かに同誌はイギリスの週刊誌ですので、香港について他とは違う関心があるのかもしれません。

いささか本質とは外れるかもしれませんが、記事の書き出しによると、有史に明らかな大量殺人事件のワースト10は、二度の世界大戦を除いた8件のうち5件は中国国内もしくは中国関係で起きている、のだそうで。具体的なデータは示されていなかったのですが、ちょっと興味をひかれる書き出しでした。

さて、記事が伝えるところ(で、日本のメディアが伝えないところ)をかいつまんで見てみると、そもそもデモの発端は「愛と平和によるオキュパイ・セントラル」(アメリカのウォールストリートで起こったデモの流れと思われます)という比較的小規模の集まりが学生を惹きつけたことから拡大していったのだそうで。

2年前に講義行動で愛国教育の義務化を阻止した17歳の活動家ジョシュア・ウォンが拘束されたことで盛り上がった抗議行動は、彼が解放されたあとも収まるどころか盛り上がっていったのだそうですが、参加者の節度ある態度はデモ周辺地域の治安を乱さず、警官隊との騒乱の後で道路上に残されたペットボトルなどのごみをリサイクルのため持ち帰るという情景が見られているのだそうです(なんだか、ワールドカップの日本人観客の態度を思い出させますが)。

さて、The Economistの読み解きですが、Leadersの結論としては「習近平氏は、この機会を生かすことができれば歴代皇帝や支配者よりも、国の安定化に寄与することができるだろう」となっているのですが、Chinaの個別記事のほうでは「祝日の後でデモが鎮静化するとすれば住民の恨みは膿のようにたまり、習氏の危機はその終わりが見えることはないだろう」とも書かれていまして、アラブの春のように劇的に何かが変わることを予感させるものにはなっていません。しかしながら、むしろその節度ゆえか、何かを変えた後も混乱が長続きする性格のものではないことを、デモは雄弁に示しているのだと、記事全体はしっかりと伝えてくれています。

中国の民主化を支援したい私としては、ぜひ日本からも支援の声が上がると良いと思っています。節度ある香港の抗議行動が、成果あるものとなりますように。