新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

むしろ大事なのは

The Economist 1月17日号のBriefingは、フランスで発生したシャルリ・エブド社襲撃事件に関する詳しい読み解き記事です。犯人はパリ郊外でも治安の悪い地域で育った移民の子孫である、というあたりはまあそうなのかな、と思える話ではあるのですが、犯人のうち弟のほうは、刑務所に服役している最中に過激思想へと走ったのではないかと言われているようです。

記事が伝えるとおり、フランスの刑務所に服役しているおよそ68,000人ほどの受刑者の6割がイスラム教徒だという話はなかなか意味深です。刑務所にはイスラム教教戒師はわずか178名しかいないのだそうですが、カトリックの700名と比べると随分と少ない数だと思います。約4万人ほど居ると思われるイスラム教徒の受刑者を教戒師一人当たりで計算すると、およそ225名ということになるのですが、仕事とはいえ225人の面倒を見るというのはおそらくそう簡単ではありませんよね。

仮に、イスラム教以外の受刑者がカトリック教戒師にケアされている(実際は違うと思いますけど)として、平均値をみると (68,000-40,000)÷700=40となって、ずいぶん手厚さが違うなという印象を受けます。実際にはプロテスタント教戒師もいるのだとすると、実数はさらに少なくなるのかもしれません。仮の議論なので、ここでは「非イスラム教徒についての仮平均」とでもしておきましょう。

日本の刑務所ではどうなっているのかなと思って統計を当ってみたのですが、刑務所に服役している人の数がだいたい75,000人くらい。教誨師(日本ではこちらの呼び方が使われているようです)は、全国教誨師連盟のホームページによると1,865人、イスラム教の方はゼロだそうです。宗教関係なし、として平均を計算すると教誨師一人当たり受刑者はおよそ40名くらいという計算になります。上の計算で求めた仮平均と同じくらいです。

出所後の、社会の受け皿がどうなっているのかと言う点も興味深い話ではありますが、記事はそこまで深く伝えてくれてはいません。教戒もしくは教誨を通じた矯正も重要だろうと思うのですが、むしろ大事なのはそっちの方じゃないのかな、と思った次第です。