新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

アメリカならでは?

The Economist2月28日号のUnited Statesには、日本ではちょっと考えられない自治体の行動について大変興味深い記事が出ています。御存知のとおり昨今のアメリカは、シェールオイルシェールガス景気に沸いているわけですが、国中全てがそうかというと必ずしもそういう訳ではないようです。

ニューヨーク州の南端にあるウィンザーと言う小さな町とその周辺の14自治体では、ニューヨーク州から分離して南のペンシルバニア州に加入したいという住民の声が高まっているのだとか。で、その理由がふるっています。

ウィンザーがある地域は、石油ガス採掘に有望なシェール地層の上にあるのですが、ニューヨークの法律はフラッキング鉱法による採掘を禁じているのだそうです。これではシェール地層の開発が難しいということになりますね、州境を超えたペンシルバニアでは、同じ地層からどんどん採掘を進めているというのに。

で、それだけではなく、ニューヨーク州議会はウィンザーのある地域へのカジノ開設に関する請願を否決したということですが、もともとIBMなどの開発拠点だったこの地域は企業がほかの土地へ移ってしまったため税収が減り、たとえば今では公共の斎場すら持てない状況になってしまったのだとか。

ということで、14自治体そろって「州を変わりたい」と言う話が出てきたということのようなのですが、実際には両州の合意とともに連邦議会による承認が必要ということなので、実現はなかなか大変らしいです。そもそも分離反対派の人もいるだろうと思いますし。

なんというか、Aではよくて、Bではダメ、という話が堂々と通るあたりがアメリカ的なのかなと思います。「話は分かるが、あなたのところを認めると、他も認めなきゃならないからダメ」的なロジックはありえないのだろうと。連邦制の利点、もしくは行政における健全な民主主義の反映事例、というところでしょうか。

というわけで、連邦議会までの道は遠いかもしれませんが、今後の分離賛成派の行方にはちょっと興味が沸きます。