新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

うまくやる、ことの難しさ

4月4日号のAsiaですが、興味深いのはマレーシアが内包するイスラム教徒と中華系・インド系住民の折り合いについての記事に垣間見えるこの国独自の変わったシステムのお話でした。

連邦制国家であることから、国中全てがそうと言う訳ではないみたいですけど、半島部北部のケランタン州では、法律が定めた裁判所とは別に伝統的なイスラム法による裁きが永年にわたって行われてきたところ(対象は地元のイスラム教徒、と言うことだと思います)、このほど州選出の政治家が、イスラム法による厳しい刑罰が正式なものとして地元の裁判所で採用されるように投票で決めるための請願を国会に対しておこなったのだとか。

独立後長きにわたってマレーシアでは国内に通常の裁判所とイスラム教裁判所が並立されていて、イスラム教徒の日常生活に関することはイスラム教徒の自治に任されてきた伝統があるのだそうです。法律的にはイスラム教裁判所が下せる刑罰は3年以下の懲役と6回以下の棒打ち、となっていて、マレーシアのイスラム教が穏健なものであることの証明みたいに考えられてきたとのこと。ケランタンの地元政府で長年与党である汎マレーシアイスラム党の政治家にとってこれらは生ぬるい刑罰のようで、たとえば飲酒や不義密通は鞭打ち100回、くらいの強化を提案しているとのこと。

中華系で仏教徒だったり、インド系でヒンズー教徒だったりする人からすれば、マレーシアは穏健なイスラム国家じゃなかったのか?ということになりますよね。全国的に見れば6割強がマレー系でイスラム教徒ということですが、中華系とインド系も残りの3割以上を占めている国の話としては多少ざらついた話に聞こえます。

The Economistの読み解きによると、背景には連邦議会の与党が最近は不振で、多数派のイスラム教徒寄りのスタンスを取ることによって党勢を盛り返したいというような思惑もあるのでは、ということですが、さて。

先日、仕事でマレーシアから日本を訪れた人たちと食事をする機会がありました。中華系とインド系の方々だったのですが、インド系の方々も中華料理に手慣れた対応をしてくれて、豚肉や牛肉を避けながら和気藹々とした席になったのですが、中華系の人に聴いてみたところ「地元では会食でインド系の人と一緒だと、『じゃあ今日はカレーだね』ということで自然にカレー屋を選びます。」ということでした。実にスマートな対応ぶりだったのは、仕事の関係で会食の機会が多い方々だから、かもしれませんが、社会全体となると話は違うようですね。