新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

貿易こそ、と言う考え方について

The Economistを読んでいて時々思わされることなのですが、この雑誌は教条主義的と言えるほど「自由貿易」の価値を重んじているのだなあと。

ネットで流れている4月25日号のLeadersですが、ラインナップは地中海をはじめとする難民問題、スコットランドの独立運動に続いて、TPPを巡る日米交渉について、となっています。その他は、ギリシャがユーロ離脱する可能性についての観測と「オープンスカイ」協定が航空業界に及ぼす影響について、となっています。

TPPが三番目に来ているあたりにも表れていると思うのですが、まとまるかどうかについて悲観的な観測もあったTPPが、対中政策の言わば象徴のような形で決着しようとしている中に見え隠れする妥協(コメの輸入枠のことばかりで、自動車関税の話が抜け落ちているあたりは姑息ですが)について、The Economistは「TPPによる経済の改善幅をスリムにするもの」だと批判しています。

国際政治の流れに押され、本来自由貿易主義が目指すべきものを二義に置くな、という叫びはこの雑誌の矜持を示したもの、と言えると思います。とはいえTPPを自由貿易主義の気高い道しるべとするのか、それとも中国封じ込め政策をこのタイミングで世に問うための妥協の産物とするのか、という二者択一は、確かに分かりやすい議論ではありますが、現実社会では極めて難しい踏絵になるでしょう。むしろ、中国を意識させることで自由貿易原理主義ともいえる考え方に正当性を見出そうとするような議論こそ、経済の実態を無視した無責任な考え方ではないかと思います。

TPPの創設が持ちかけられてこの方、日本は政権交代を経る中で一時期たいへん慎重な判断があったものの、一貫して参加のための議論を続けてきたことは重要な実績だろうと思います。そのなかで、英国式の重商主義をそのまま是としているわけではない日本にとって、粘り強い交渉の中で勝ち取れるものは勝ち取るという選択肢からぶれなかったことは評価したいと思います。