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新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

生産性向上を阻んできたもの

The Economistデジタル版のSpecial report "The World Economy"には、近年の技術革新が期待されたほどの生産性向上を実現していないという現実についてとても興味深いデータを示してくれています。曰く、ICTは、電機やクルマ、電話の発明に比べてそれほど大きく人々の働きぶりを変革させたわけではない、またデータによるとアメリカに比べ他の先進国では高等教育が生産性にもたらした影響が限定的である、などの分析ですが、特に高等教育と生産性を考えると、日本の場合もその効果が限定的なものであることがデータとともに示されています。

イギリスやアメリカに比べ、日本の雇用はミドルスキルの職種が圧倒的に多く(いわゆるサラリーマンや生産管理者の仕事)、ロボットに代替された低スキルの仕事はぐっと少なくなっています。つまり、高等教育を受けてもそれを十分に生かせるハイスキルの仕事が増えない限り、そこで教育投資のロスが発生する、というわけですね。

自らに引き直して考えると、確かに仕事で使う計算はそのほとんどが中学校レベルまでのもので、高校の数学より難しい概念で説明しなければならない要素はごく限られます。ということは、その仕事をするために受けるべき教育はせいぜい高校どまりで十分だったということができるかもしれません。ところが、皆大学へ行くような世の中になってくると、魚屋さんも大工さんも大卒が当たり前、と言う社会になっているわけです。

高等教育の成果として、魚屋さんや大工さんが自らの手で非効率を生んでいる伝統や因習を打ち破り、革新的な改善を施せるというならそれなりの意味はあろうかと思うのですが、みんながみんなそれをやれるかというと、それもまた難しかろうと思います。

特に昨今、技術革新の結果として労働者が機械に置き換わった結果、社会が提供できる労働機会が、低賃金で知られた介護の仕事あるいは非正規雇用によるものだったりしたわけで、これがボトルネックになって社会全体の生産性向上を阻んできた要素もあると思います。

幸か不幸か日本は人口減少時代に入り、多方面で人手不足が深刻化しているという現実もあります。養うべき人口が少なくなったことが社会全体で生産性向上をスムースに進められる好機であると捉えて、被雇用者がより幸せになる方向に雇用構造を変えて行ければ良いのですが。