AIIBと世界遺産
5月30日号のAsiaには、日本のAIIB加盟がありうるのかについて解説した記事に続き、短い記事ですがUNESCOの世界遺産に日本の明治産業革命遺産が登録されることに関して韓国そして中国が反対していることを伝えています。
まず、AIIBについてThe Economistは「向こう数カ月はAIIBの貸出が信頼できるものなのか見極めるため待つだろう」と見ているようです。安倍政権の軸足が日米同盟にこそあり、域内経済の活性化について日本はTPPへの参加を優先させていることにも触れています。
そう見ると、いやらしいのはTPP交渉がアメリカの議会による承認が遅れることで、いずれも不調に終わるようだと域内経済における日本の立ち位置が揺らぐ、というのがThe Economistの見方ですが、案外どちらも不調に終わるパターンは「あり」なのかもしれません。それはそれで日本の覚悟の問題でもあるので、政府担当者には危機管理の在り方をしっかりと認識したうえで臨んでいただきたいものだと考えます。
世界遺産についても、意外に難しいのは「明治日本」と第二次大戦時の日本が直接つながっている、という歴史認識に対してどのような反論ができるかと言う点にあります。6月28日にUNESCOの世界遺産委員会があり、そこで投票により採否が決定されるようですが、これをどう乗り切るかが今後の日本の立ち位置に意外と大きな影響を与えることになるのではないだろうか、個人的にはこの点を大変憂慮しています。明治維新「まで」世界にとって悪であった、という整理は日本には耐えがたいものだと思いますが、憲法を含む政治体制は確かに第二次大戦まで引き継がれたわけで、そうだとすると中韓にとって日本の弱点をさらに明確化する大きなチャンスに見えるのではないでしょうか。しかもそれは日本側から提起された議論(世界遺産登録)であると言う構図なので、両国からすれば「提案を否決するだけ」で大きな効果を見込めるということになります。
先日のNPT交渉におけるヒロシマ・ナガサキ訪問への呼びかけが否定されたプロセスは、NPT交渉自体が暗礁に乗り上げたこともあって、一瞬の注目で終わった感がありますが、この辺りの駆け引きには一瞬たりとも気が抜けないことを、交渉当事者にはしっかりと認識いただきたいものです。