新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

人口減少を世界規模で見ると

5月30日号のInternationalは、都市の人口減少問題について世界の実情を伝えてくれています。日本でこの問題に関わっていると、枕詞としては触れられることがあっても、日本国内の問題が深刻なだけに、ついつい世界の実態を見過ごしてしまいがちになるのですが、実は世界の都市が共通で抱える問題のひとつでもあるということを、この記事は思い出させてくれます。

記事では旧東ドイツのデサウ・ロスラウという街の様子が描写されているのですが、住む人がいなくなったアパート群、人のいない通り、閉店してしまった店、草生した空き地など、読んでいて日本の地方都市の様子を書いているのではないかと思われる状況に思わずはっとさせられます。

たとえば、世界の人口30万人以上の都市で人口減少に直面しているところは100か所以上あり、西欧・東欧・旧ロシア・その他について(分類がヨーロッパ目線ですが)広く分布していることからも、都市の人口減少が世界の問題であることがわかると思います。さらに(当然と言えば当然ですが)、産業構造の転換などによって人々が移住すること以外に、少子化による影響を説明するための例として日本そしてアジアの状況も参照されています。日本は合計特殊出生率が1.4弱と言う水準にあり、人口増が望める状態にないことは良く知られていますが、韓国は1.2と日本を下回る勢いなのだとか。

デサウ・ロスラウでも、安い住宅を供給するとか、税金をまけるとか、他がやっているような人口減少対策を取ったようなのですが、そのいずれもうまく行かなかったということのようです。

地球温暖化問題もそうですが、大規模で構造的な問題に対応しようとするとき、一つのパターンとして「緩和」への取り組み(ここで言えば安い住宅を供給して、居住者を増やそうとする試み)とは別に、「適応」という視点があり得るように思います。つまり、「人口は減るもんだ」という認識の下で「では減ったらどうすればよいのか?」を考えて対応するという取り組みのことです。一見相反するスタンスのようにも見えますが、温暖化については「緩和」「適応」の両面から対策が取られようとしています。すなわち、少子化と都市の人口減少問題についても、地球規模で発生している大規模で構造的な問題である、との視点にたてば、待機児童の解消など緩和策と併せて、「減った人口にどう対応するか?」という適応策も検討・実施されるべきであろう、ということですね。