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新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

それほどのもんですかね

ネットでは6月6日号が読めるようになっています。

Leadersの一本目は、アメリカと中東のもつれた関係についてです。これはこれで大変興味のある話なのですが、三本目に日本の企業統治に関する話題が出ています。これは今週から日本の大企業の取締役会が、最低でも二人の社外取締役を置くことを義務付けた、というニュースがきっかけなのですが、いわゆる日本的経営の縛りや株式持ち合いなどの慣習が、株主利益そして経済全体の効率的な運営を阻んできた(低い雇用の流動性、巨額の内部留保など)と言う認識自体はこれまで言い古されてきた批判とさほど変わらないように思えます。

それが、社外取締役の導入だけで何か大きく変わるもんですかね、というのが私の正直な感想です。雇用問題は人口減少と高齢化の進展により人手不足が深刻化する中でこれまでとは違った動きを見せると思いますし、そもそも巨額の内部留保リーマンショックなど、外的要因による経済の不可測的な変動に対する備えと言う意味もあったはずで、それはいわば「守りの投資」とも言えるものだろうと思います。

確かに、度重なる景気浮揚策の結果としてなされた設備投資の先取りで、減価償却費が膨らみ、その結果として引き当てた現預金が、再投資を望める機会以上に溜まってしまった等の事例もあるのかもしれません。それやらこれやらを合算すると、積みあがった現預金の総額は、The Economistによると231兆円にものぼるのだそうで、日本のGDPの約半分という規模です。

そのような認識に基づいてThe Economistが最も力点を置いて懸念するのが、リスク回避主義に凝り固まった大企業の経営についてです。上意下達の取締役会はリスクを取ることを求めず、結果として日本の取締役の給与は世界的に見て低いまま、という解説です。

このあたりは、企業価値の最大化が取締役の責務とすると、考え方としてわからなくはないところではありますが、他方でたとえば北欧諸国などと比べると雇用環境の改善などが企業任せにされている部分が大きい日本にあって、企業ベースで雇用の流動化などを進めようとすると、またぞろ派遣切りだの何だのと言う社会不安を呼び起こしてしまう惧れがある訳で。

企業のあり方を論じるためには、先ず社会のあり方を全体として考える必要性が高いように感じています。そこで求められるのは、それが国なのか自治体なのかは別として、働く人が幸せに暮らせる社会の設計を考える中で、妥当性のある形で私企業の役割を割り振ってゆくと言ったような取り組みだろうと思います。

だとすると、ムリに西欧流のやり方に合わせる必要はなく、日本は日本のやり方で、社会全体のバランスを考えてゆくということで良いのだろうと思います。私企業(大企業)については、投資家への責任を果たすと言う意味で透明性を持ったリスクテイクが勧奨されるべき、という大前提は変わらないものの。

The Economistも(自らへの批判をかわすように)「アングロサクソン的な資本主義でなくても、進化した日本流のやり方でも効果は出せるはず」と締めくくっております。社外取締役の義務化がそれを一気に実現してくれるものとは思いませんが、社会全体が幸福のあり方を模索する中で、企業のあり方についてもまた議論が進むことを期待したいと思います。