新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

わかっていたはずの戦慄

The Economist電子版のトップには、先週末から世界の株式市場を震撼させた中国発の世界同時株安に関する論評が出ています。元切り下げをきっかけに始まった今回の株安ですが、中国のお金持ちは株式市場よりも不動産や事業などの現物投資におカネを集中させているため、株式市場の下落がかの国の経済に致命的なダメージを与えたり、98年のアジア危機のような連鎖反応を呼ぶことはないだろう、というのがThe Economistの冷静な分析です。

そうは言うものの、新興国の通貨が軒並み下落し、発展のシナリオを見直さなくてはならなくなったのは事実だろうと思います。だとすると、新興国に代わって世界経済のけん引役を期待されるのは先進国、となるわけですが、日本は言うに及ばず米欧各国ものきなみゼロ金利状態を脱出できていないことから、98年のアジア危機に素早く対応した大幅利下げのような技は使える状態にない、ということになります。仮に中国の減速が本当に深刻なものだったとした場合には、打つ手がないということと同じです。

そのような状況にあることは以前から判っていたはずなのに、実際に株安がもたらした戦慄を事前に予想した人は少なかったというあたりに、株式投資という制度が抱える構造的な弱点を見たような気がします。