新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

シリア難民が生むかもしれない価値と、移民に対する社会的寛容というアメリカの持つ資産について

The Economistクリスマス特大号のUnited Statesには、これまで歴史的に多くの貧しい移民を受け入れ、先住者たちとの軋轢を克服し、そしてそれを力にしてきたセントルイスの事例が紹介されています。

古くはドイツからの移住者とアイルランドからの移民との緊張があり、時代を経てはヒスパニックそしてアジア系の移民も多かったこの都市に、多くのボスニア難民がやってきたのは90年代のことだそうです。裏庭で子羊を焼いているところを「犬を丸焼きにしている」と誤解されて通報されたり、多くがイスラム教徒であることからも地元との擦れ違いがあったようですが、今日セントルイスには5万人を超えるボスニア出身者が暮らしており、そのおかげで地元のサッカーが強くなったという恩恵があったようですが、それより何より真面目で良く働くボスニア人たちが地元にもたらしたものは、難民につきものの経済的な負荷ではなく恩恵であったことが地元に幸いした、ということのようです。手に職のある人が多く、他の地域の難民に比べて無料の給食スタンプを受ける人が少なかった、という事実がそれを物語っています。

そう考えると、教育レベルも高く、歴史的にもその商才を世界的に評価されているシリア難民を受け入れることには、一定以上の価値と言うかメリットがありえるのではないだろうか、とも思えます。むろん、セントルイスのように昔から他者を受け入れ続けた歴史と伝統があればこそ成り立つ議論だとは思うのですが。

ボスニアの人たちは、外見的には全くヨーロッパ人で、私たち日本人からするとフランスやイタリアの人たちと区別するのはカンタンではありません。それでも多くがイスラム教徒である彼等は、ドナルド・トランプ氏の選挙演説をどう聞いているのでしょうか。

 

さて、今回で今年の記事はおしまいです。2015年も、「新 The Economistを読むブログ」をご愛読いただき、どうもありがとうございました。来年も、時間を見つけてなるべく日本のメディアとは異なる視点の記事をアップしてゆきたいと思います。引き続きよろしくお願いします。