新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

今年も、The Big Mac Index

1月9日号のThe Economistには、同誌の名物記事であるThe Big Mac Indexが出ています。これは、世界各国で売られているビッグマックの価格を比べることで、通貨の価値を分かりやすく示そう、という試みなのですが、正確性を犠牲にしても分かりやすさを追求しようというブレない企画で、日本でも各経済誌をはじめとして様々なところでその分析内容が引用されていますね。

さて、今年の分析なのですが、例年にも増して通貨価値の変動に焦点が当たっており、目下通貨安が顕著なのはたとえばロシアである、と言う書き出しです。アメリカ本国では、4大都市の平均価格で4ドル93セントするビッグマックが、ロシアでは今年1月段階のレートで計算すると1ドル53セントで買えてしまうとのこと。ルーブルのレートは2014年7月に比べても一層のドル高傾向が続いており、セオリー通りに行けば通貨安は輸出競争力を高めることから、記事の書き出しも「もしかして、メイドインロシアのラベルが普及したとか?」(ちょっとジョーク)となっております。

で、比較対象というか、物事はセオリー通り行くとは限りませんということで、スポットライトが当たっているのが日本の円であります。2012年1月の対ドルレートを100とすると、2016年1月の実勢レートでは65%ほど円安になっているそうですが、同じ期間の輸出量自体はこの4年間ほとんど横ばいで、円安が輸出量の拡大にほとんど寄与していないことが判ります。

記事では、世銀・IMFの分析として為替が輸出量の増減に大きな影響を及ぼさない一つの理由はグローバルサプライチェーンの深化にあるとの見解を挙げています。今や部品供給と組み立ては、世界の異なる地域で重層的に展開されるようになっており、製品輸出力が強化される通貨安は部品調達面で逆方向に働くため、期待されるほどのメリットを出さないのだ、ということだそうです。

仮に日本の貿易量が為替レートに対して下方硬直的(円安に進んでも、さほど量が増えない)なのだとしたら、それはもしかして上方硬直性(円高になってもさほど減らない)を示唆するものであったりするんでしょうか。だとしたら多少円高になってくれたほうが日本経済としてはありがたいとか?

現実的には、少子高齢化や財政悪化など、日本は産業適地としての魅力をどんどん失いつつある状況です。それでも技術力や教育水準、政治的安定性や裾野産業の充実度など、いまだに世界のトップクラスと言える長所を数多く抱えていることは事実なので、製造業の国内回帰やグローバルサプライチェーンへの日本の参加が厚みを増すことで、円安をチャンスとできるような展開が進むことを期待したいと思います。