新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

報道されない脅威とその現実

3月19日にインドネシア・ナトゥナ島沖で発生したインドネシア当局による中国密漁船拿捕と、その後の中国公船によるインドネシア公船への体当たり(!)そして拿捕された漁船の奪還事件は、日本ではあまり報道されなかったように思います。船員はすでに逮捕されていて、そのままインドネシア公船により連行されたのだそうですが。

確かにネットで調べると、事実関係を伝える日本語の記事はあちこちに乗っていますが、どれもその内容は押さえ気味です。

The Economistは、フィリピンとの争いが国際司法裁判所に持ち込まれていることも含め、中国の南シナ海進出に関する詳細な報告を3月26日号に載せています。

曰く、Nine-dot-line(九段線)といわれる、ロックバンドKISSの舌のような形をしたラインで南シナ海を埋め尽くし、自国の縄張りを一方的に主張していること、2013年にASEAN諸国と結んだ覚書では南シナ海の無人島などに手を加えないことを約束しているのに、その後10を超えるサンゴ礁などに軍事使用が明らかな滑走路などを建設したこと、今回事件が発生したナトゥナ沖は明らかに九段線の外なのに、インドネシア政府の抗議に対し謝罪するどころか、インドネシア側の対応を不法なものとして漁船乗組員の早期解放を要求した、のだそうです。

中国とインドネシアとは、海洋進出をめぐる軋轢が比較的少ない関係で、九段線もインドネシアから見れば直接の利害関係を及ばさないものだったと思うのですが、ASEAN最大の国をわざわざ敵に回すような振る舞い、についてそれをどう解釈すべきなのか、慎重を旨とする日本のメディアには荷が勝ちすぎた事件だったのかもしれませんね。

一見して、東シナ海をめぐる日本との対立より中国の対応が傲慢であることが見て取れます。弱い国、に対するかの国の態度がどう言うものなのかを示す好例だと思います。