新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

垂直統合ビジネスモデル今昔

4月16日号のShumpeterは、アウトソーシング全盛の世にあって製造から販売まで垂直統合モデルが差別的なアップルとテスラの例を紹介しています。

そもそも垂直統合と言えば、今から100年ほど前、製造業が盛んな時代のアメリカにおいて叫ばれた競争力の源泉だった、というのが記事の書き出しです。フォードが自社所有するミネソタの鉱山から鉄鉱石をデトロイトに送り、シカゴの道路を走らせるまでに84時間しかかからない、と言ったそうですが、彼の名言として「正しくやろうと思うなら自分でやれ」という言葉も紹介されています。

時代は下り、グローバル化の流れの中で、多様な選択肢を自由に選べる時代になって、むしろコア・コンピタンスへの集中投資と思い切ったアウトソーシングがもてはやされるようになりました。ところが最近は、ベンチャー企業でも自前で垂直統合を目指す流れが出てきているのだそうです。

アップルもアプリのデザインから機器の販売までを自社で手がけ、テスラも自前で電池の工場を持っています。このビジネスモデルが提供する強みをThe Economistは次の5つの点にまとめています。

1)シンプルであること。たとえばですが、ユーザーは同梱されているいくつもの説明書を読みたくはないわけで、ボタン一つ押せばあとは機械がやってくれるのが良い、ということですね。

2)先進技術を前面に出せること。アウトソーシングは標準化された技術についての選択肢としては強いかもしれませんが、自社の技術が一歩先を行っている場合のパートナーとしては弱いのです。

3)従って、ご指名されやすいこと。

4)さらにスピードにも直結すること。特に開発面でこのメリットは大きいと思います。

5)地政学的、または環境面でリスクが小さくなること。アウトソーシングの広がりとブランド価値の保全とは確かに二律背反するところがあります。あくまでもののたとえですが、外注先がヘマをやらかして、それが自社のブランドに影響する可能性は、外注契約数の二乗に比例する?みたいな話なのかな、と。

もっとも、フォードの時代とは異なって、アップルもスマホの製造については台湾企業に下請けさせていたりしますので、単純にすべてを自社でやっているというわけではないのです。要は使い分け、ということですかね。