新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

希望の見えない選択

ネットでは4月23日号が流れています。Leadersのトップは、アメリカ大統領選挙に向けて民主党内の支持を固めつつあるヒラリー・クリントン候補と、彼女の政策に関する漠然とした失望感に合わせて、彼女以外に妥当な選択肢を持てずにいるアメリカの現状を伝えています。

曰く、格差の拡大と低所得層の失望感の高まりについて、クリントン女史の政策がやや方向違いに見えること(技術革新への対応遅れや中国との貿易に対応すべきところ、ブラック企業の雇用主への罰則などに軸足を置いているとの批判)、TPPなどの先進的な政策に背を向けていることなどを懸念材料として挙げています。

そんな彼女の対抗馬が、社会主義政策を掲げるサンダース上院議員だったり(オバマ大統領の富裕層課税にすら忌避感を示したアメリカで、彼の考え方は最終的に通用しないと思います)、共和党はと見ればトランプ氏だったりクルーズ氏だったりするというのは、これはまさに希望の見えない選択と言わざるを得ないのではないかと思います。

あきらめずに、経験豊かな彼女による作り込まれた政策を、少しでも強力なものにしてゆきたいというのがThe Economistのスタンスのようで~彼女が大統領になることを仕方なくも予想せざるを得ないということだと思いますが~、記事はたとえばマイナス金利ならぬ低所得層向けのマイナス税制についても言及しています。

確かに時代的に言えば、アメリカという大きな器のありようを変えずに対症療法でできるところまでやる、という段階にあるのではないかと思える中、現実的な選択肢は彼女しかないのかもしれません。

そう考えると何ともやるせない大統領選挙、ということになりますが、反面でサンダース上院議員の粘りや共和党の混乱ぶりが、今のアメリカがどの段階にいるのかを可視化してくれるバロメーターだと思って見ていると、それはそれで興味深い選挙になりそうです。候補選びに希望は持てなくても、明日を考えるうえでの今を見極めるための絶好の機会である、という意味において。