新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

日本に来る前に

5月21日号のAsiaでは、G7サミットに始まる訪日を前に、今日からベトナムを訪問するアメリカ・オバマ大統領と、大統領の訪問がベトナムにもたらす変化への期待が報じられています。

曰く、ベトナムは貿易面でTPPにより最も恩恵を受ける国であろうこと、ただしそのTPPがベトナムに求める変化のうち、見過ごすべきでないものとして労働に関する規制緩和があること。

ベトナムは、よく思い出してみれば共産党一党支配の国でして、全国津々浦々の労働組合というのは一元的な共産党の指導の下で組織化されていて、つまりストライキ一つ打つにしても中央の指導を得ることが重要という体制なわけです。その影響範囲はというと、The Economistに言わせれば「教会からチェスクラブまで」ということだそうで、TPPが貿易面での自由化と相対でベトナムに求めているのが企業別労働組合の結成を認めること、なのだそうです。これをしないと、どこまで行っても共産党支配のくびきから逃れられないことを、TPPを主導したアメリカはよくわかっているということだと思います。

今のところ、ベトナム政府がこれを素直に受け入れる兆候はごく限られるようですが、それよりも心配なのはアメリカ本国でTPPはそのまま批准されるのか?という点ですね。日本としても、知的財産権保護などの面で途上国メンバーの制度改革には期待する部分が大きくなるはずなのですが、そもそもアメリカが批准しないことには成り立たないわけで。

日本では、オバマ大統領というとヒロシマ訪問一色ですが、何も彼はヒロシマにだけ来るわけではないということですね。実際、ヒロシマの話はBanyanで~かなり穿った批判記事~少し触れられているだけで、The Economistとしても大きな関心を持つ話にはなっていない模様ですし。