新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

心は動かない

5月28日号のBanyanには、中国との関係が微妙に変化しだしている台湾そして香港についての論評が出ています。

台湾では民主的な選挙により、親中派の国民党政権にかわって独立志向の強い民進党政権が誕生したわけですが、これを巡る中国の反応は露骨な外交的嫌がらせともいえるもので、台湾の友好国だったガンビアとの外交関係樹立やケニア政府を動かして詐欺容疑で拘留されていた台湾籍の人間を中国へ強制送還させるなど、台湾にとって自らが「一つの中国」を語る相手としてふさわしくないことを強烈に印象付けるものだったろうと思います。

この一連の動きをみて中国への反感が高まっているのが香港、なのだそうですが、さもありなんという感じがします。香港の場合、いまさら何かが大きく変わるとか、あるいは独立がありうるとか、そういう話にはならないのだろうと思いますが、一国二制度がまやかしに終わることのないように、という意味において香港人の態度は十分理解できるものだと思います。

The Economistの読み解きは、「台湾や香港と新たな火種を抱えるには中国はあまりにたくさんの問題を抱えすぎている」ということなのですが、この場合むしろそれ以上に台湾人・香港人の人たちの心が動かないことのほうがより決定的なのではないかと。

理念や哲学の面において、現政権のやり方では相手側の心を決して動かせないことを、実は中国側も認識しているのではないかと思うのですが、それでもごり押しするしか手立てがない、というあたりに現政権の限界を見るような気がします。