新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

ロボットにとって代わられることへの恐怖とは

The Economist電子版のトップページ、下の方を見るとI'm afraid I can't do thatというタイトルで、民生用ロボットの実用化に関する記事がでています。レストランや銀行での接客ロボット、あるいはクルマの自動運転などで仕事がなくなるかもしれない、と言った分かりやすい論調で読者の危機感を煽る記事はよく目にすると思います。

人は危機感を煽られると、もっと情報を得ようとする生き物のようで、The Economistの記事もその意味では若干ながら「売らんかな」的な匂いが漂っていて、この手の記事に共通の特徴が覗えます。それはまとめて言うと①単純な仕事を代替するロボットは様々な分野で仕事の場に入り込んでくる、そしてそのスピードは思ったより速い、②でもだからと言って人間の仕事がなくなるというわけではない、という2点に集約されると思います。なのに②について、必ずしも具体的なビジョンを示すわけではなく(以下に述べる理由により、この点が不満の素ですね)。

www.economist.com

ロボットに限らず、たとえばIoT(モノのインターネット化)だとか、Fintechだとかいう新しいコンセプトは似たようなところがあると思うのですが、人間の抱く危機感はもっと身近なところに端を発しているような気がします。

IoTやFintechが普及すると何が起こるか。たとえば自分に代わってIoTを備えた冷蔵庫が自動的になくなりそうなタマゴを注文してくれていて、帰ったら玄関に配達されたタマゴが置いてある。消費者がすべきことは「ああ冷蔵庫が頼んでくれたのね」、ということで納得してそのタマゴをしまうだけ。その代金はFintechによって自動的に引き落とされている、というような明日のくらしの一場面を、明快なビジョンとして持てるのかどうかこそが大事なのだろうと思うのです。

それはたとえばスーパーマーケットからすれば「じゃあどのように対応すればよいか」という生き残り策のスタート地点になるわけで、競争社会においてスタートが早いことの有利さは言わずもがなだとすれば、変化に伴う新しいビジョンは何なのか、こそを求めようとする人たちがむさぼるように読むのがこの手の記事、ということなのではないかと思います。

ロボットを含む新しい技術が、職場や生活のあり方を大きく変化させることは予想がつくとして、人間の方がそれにどう適応すればよいのか、そしてその変化はいつ頃本格化するのか、そのスピードに合わせた最適化のために、今私たちは何をすればよいのか、突き詰めていえば人間の関心はそのあたりにあるのだろうと推論します。

恐怖と言うよりはスリル、不安と言うよりはワクワク感、ではないかと思ってしまうのは、鉄腕アトム以来この方、ロボットに否定的なイメージを持たずに来たことの影響かもしれませんが、上の推論が当たっているとすれば、この感触は案外根拠のないものでもないのだろうと思います。The Economistの記者さんには、その点で一層の奮起を期待したいかな、と。