新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

ドゥテルテのフィリピンが考えていること

9月17日号のAsiaには、先ごろG20首脳会議でアメリカのオバマ大統領に対して悪態をつき、首脳会談を棒に振ったことが記憶に新しいフィリピンのドゥテルテ大統領と、対中関係を巡るフィリピンの動きについての興味深い記事が載っています。

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その後も今週になって、ミンダナオ島の治安維持を目的に駐留する米軍特別部隊の撤退を呼びかけたのだそうですし、9月13日には防衛大臣に対して、武器の調達先をアメリカではなくロシアそして中国に変更するよう指示を出したとのこと。さらに海軍に対しても、南シナ海での米海軍艦艇との共同パトロールを止めるよう指示をだしたりしているのだそうです。

これら一連の動きに加え、中国との直接対話にも前向きだとの観測があるようで、他では歯に衣着せない同大統領が中国についてだけは慎重な物言いを続けていることも対中外交への期待をにじませるものになっているようです。

果たして彼は何をしようとしているのでしょうか?南シナ海における中国の権益は認められないとした国際仲裁裁判所の判決を、中国に少しでも高く売ろうとしているのかもしれません。確かに中国について言及するとき、何の関係もない国内の鉄道網整備などの話が大統領の口をついて出ることもあるのだそうです。でも、今の中国が裁判所の判決を鉄道プロジェクトと引き換えにしたりするでしょうか?帰趨がわからない以上、そちらに賭けるという選択肢はあるのかもしれません。でもそれは、アメリカや日本をはじめとする国際社会が第一選択肢に選ぶオプションでないことは自明だと思います。

むろん、フィリピンは第一者ですから、せっかく得た判決を最も有効に使いたいという心理が強く働くのは当たり前だと思います。ドゥテルテ大統領の対中姿勢を読み解こうとするとき、彼の態度を客観的に説明できる要因はその他には見当たらない気がします。

外交経験のなさがなせる危なっかしさ、と言われればそうなのかもしれません。中国との調整が不調で、最後には結局アメリカにすがるという結論が待っているのかもしれません。そうなることで失うものと、対中交渉で得られるかも知れないものとの期待値の大きさが、彼の目には少し違って見えている、ということなのだろうと思います。