新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

CORSIA(国際線のための炭素相殺・削減スキーム)について

The Economist電子版は旅行をテーマにしたGulliverというコラムで、今後長期的な成長が見込まれる航空各社の国際線ビジネスと環境汚染の問題について論じています。

www.economist.com

記事によると現状で国際線のフライトが起因となる温暖化ガスの排出は、比率にして全体の約2%程度であろうと言われており、一見大したことないように思えます。しかし1970年代から15年ごとに産業の規模は倍々ゲームで拡大しており、現状ボーイング社やエアバス社が抱える航空機の受注残を勘定に入れると、この成長傾向はしばらく続くことが確実視されているとのことです。

先ごろ発効が決まったパリ協定では、各国の国内線について規制の網がかかっているものの、国境をまたぐ国際線については別枠で議論がなされていて、協定からは外れているのですが、その取り決めが表題にあるCORSIA (Carbon Offsetting and Reduction Scheme for International Aviation: 国際線のための炭素相殺・削減スキーム)と言われる多国間調整メカニズムです。これは、排出国が決められた排出量を超えた分についてマーケットメカニズムに基づく負担(超過分のクレジットを市場価格で買い入れる)を受け入れるという、言ってみれば京都議定書以来の「枯れた」手法のようなのですが、主管するICAO (International Civil Aviation Organization: 国際民間航空機関国連の専門機関の一つ)のサイトによると、日本を含めた66か国が参加を表明しており、2021年から稼働するスキームは2027年には加盟国への義務的参加が要求されるようになる方向だそうです。日本も今年9月に参加を正式に表明しています。

Carbon Offsetting and Reduction Scheme for International Aviation (CORSIA)

The Economistが伝える懸念事項としては、ロシアやブラジル(航空機の生産国でもありますね)、インドなど、対策に参加してほしい大国がまだ参加していないこと、特にロシアは独自の枠組みを提案する動きを見せていることなどがあります。2021年から2027年というフレームワークや、枯れた手法の適用などは、堅実な対応と呼べるものなのかもしれませんが、それ以上ではないとも言えるわけで。

じゃあどうすればよいのか?という疑問への、素晴らしい決め手がない以上、やれることを辛抱強くやりましょうというしかない人類の現状を、この取り決めは図らずも象徴してくれているように思います。