新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

嘘が汚す権威

The Economist電子版のトップは、抜き差しならない大統領令により、理不尽にもアメリカ各地の空港で足止めされたり、出発前に搭乗拒否にあったイスラム教国出身者を巡る詳しい情報になっています。日本のメディアは火の粉を恐れてか、ほとんど報道していないトランプの嘘っぱちについて鋭く切り込んでいます。

まず、入国差し止めになったのがイラン、イラクリビアソマリアスーダン、シリア、イエメンだそうですが、9.11テロ実行犯の出身国であるエジプト、アラブ首長国連邦レバノンそしてサウジアラビアはこの大統領令に含まれません。

テロを未然に防止すると言っている割に、アメリカでテロで人が死ぬ確率は、牛に殺されたり花火やエレベータの事故で死ぬより低い、のだそうです。そんな低確率のトラブルに対応するために、何百人もの入国を突然ストップさせるとは。

足止めを食らった人の中には、グリーンカード保持者もいるそうで、アメリカが長年かかって築き上げた信用を下支えするシステムに大きな瑕疵を与える措置だということがわからないのでしょうかね。

最悪なのは、シリアのキリスト教徒はこの措置に含まれないことの説明として、「これまでシリア出身イスラム教徒が自由にアメリカに来られていたのに、キリスト教徒は迫害されて理不尽にもそれができなかった。その措置を是正し公平にする。」とトランプは言っているそうですが、昨年アメリカが受け入れた難民の統計だと、イスラム教徒が約3万9千人、キリスト教徒が約3万8千人だったそうです。

就任わずか2週間ですが、これまでアメリカと国際社会が脈々と築き上げてきた価値観やシステムを平気の嘘で汚すという点において、史上最悪の大統領であることが見えてきたのではないかと思います。