新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

セカイノサケメ

The Economist2月4日号は、ホワイトハウスの反逆者、というタイトルでトランプ米大統領が矢継ぎ早に繰り出す新しい政策についてトップで論評していますが、特に外交面ではイスラム系7か国からの入国差し止めと、難民受け入れの一時停止についてなかなか洞察の利いた深堀りをしてくれています。曰く、大統領上級顧問のバノン氏が震源地なのだとか。彼はメディアによってスターウォーズダース・ベイダーにも擬せられているところ、イスラム過激派と戦うには、ロシアをパートナーに選ぶしかない、という思い切った選択を提案したのだと。思い切った考え方だと思います。キリスト教ユダヤ教連合対イスラム過激派という絵姿は、世界を分断しようとする試みと批判されることも覚悟の政策に違いありません。そういう流れの中で見ると、今のところ日本については傍流にあるものの、結局はこの流れに付いて行くしかないヨーロッパと同じように、アメリカ側につくことを期待されているということだと思います。そうすると見えてくる裂け目の向こうにいるのは、もしかしてイスラム過激派と中国の連合だったりするのか?それがトランプ政権の仮想敵国群(あるいは実際の)なのか?

バノンが描く世界の流れでは、ヨーロッパにとってはロシアとの妥協を強いられ、親米アラブ勢力はイスラエルの風下に置かれ、冷え切った関係のまま同盟に残らざるを得ない日本と韓国もそうですが、アメリカ第一主義なるもののもたらす居心地の悪さが際立つ絵姿になりそうです。

でもそれが、アメリカ市民の安全につながる政策だということで、選挙を通じてアメリカ人が選んだものの考え方だ、ということなわけですね、現時点では。核戦争の脅威が逓減したと思ったら際限なくはびこり出したテロや小規模紛争に対応するため、ブッシュ政権以降のアメリカが負担してきた軍事的な対応を、壁や裂け目を作り出すことで政治的な対応に置き換えようとしている(言ってみれば負担軽減策)、私の目にはバノンの政策がそんなふうに映るのですが。