新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

再生可能エネルギー不都合な真実

 2月25日号のThe Economistはそのトップ記事で、再生可能エネルギーがもたらす電力事業の、あまり明るくない将来(?)について伝えています。ほぼ間違いない話で言えば、今後とも再生可能エネルギーの活用は進むと思われるのですが、もしかしたらそれは環境的にも財務的にも中途半端なメリットしか提供しないのではないか、というのが記事の趣旨です。

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大規模集約型の化石燃料あるいは原子力による発電システムと異なり、分散した場所で建設される再生可能エネルギー(特に太陽光と風力)を使うためには、送電のための設備投資が必要となるという側面があります。

では投資家が喜んで再生可能エネルギーに投資するかというと、以下のような問題がその障害になるのではないか、ということなのですがそれは①環境問題に関する補助金のおかげで発電能力が増えすぎてしまうこと、②太陽光も風力も、自然現象によって発電しない時間があるため、その隙間を埋めるために補完的な電源が必要になること(結局化石燃料を使う場合が多い)、③太陽光と風力は原料調達コストがほぼゼロのため、価格も安く収益性が低いこと、などによるとの分析です。

①と③だけで済むなら、「安い再生可能エネルギー」を実現してくれるのかもしれませんが、安いということは投資のリターンが少ないということとほぼ同値でもあるわけです。そこに②のような要素が乗っかるとすると、必ずしも安いばかりとは言えなくなるわけで、全体システムとしては結局複雑なモノになる点をどう調整するのか、ということになりますね。

記事では、補完電源と再生可能電源の共存について、最近日本でも注目されているスマートエネルギーシステム(コンピューターによる需要予測や給電調整)によって解決の道が見えてきているのは朗報としながらも、旧態依然たる電力価格の体系がスマートエネルギーシステムの普及を阻むことへの警戒感をあらわにしています。

価格調整システムがしっかり出来上がるのであれば、あとは料金徴収方法などの問題なのではないかと思うのですが、長年にわたって独占事業的なやり方に慣れている電力業界が、多様化する料金徴収システムに慣れるには時間がかかる、ということですかね。日本でも、鳴り物入りで始まった電力小売り自由化ですが、ケータイのような爆発的なブームになっているという話は聞きませんし。