新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

もしかすると不条理が通る世界

先ごろメディアが、日本では一瞬だけだったかもしれませんが注目したニュースとして、サウジアラビアやエジプトなど中東諸国が同じ中東のカタールと国交を断絶したという事件がありました。

ネットで流れているThe Economist6月10日号のLeadersに、その事件についての簡潔な論評が出ていたので注目します。

www.economist.com

記事によると、カタールは小国なのにLNG生産量で世界一であり、世界をカバーするカタール航空や衛星TV局のアル・ジャジーラの本社を持ち、ガス開発では(サウジアラビアに敵対する)イランとも協力関係にあるという、アラブ社会では開かれた国というイメージがあったところだと思います。米空軍も基地を持っていて、アメリカからすれば重要な友好国だと思うのですが、サウジアラビアやエジプトの主張はカタールがテロを助長しているということで、イランとの関係に加えてイスラム同胞団などへの関与が取り沙汰されているのだそうです。

トランプ大統領は、先ごろサウジアラビアに加え、バーレーンUAE等も参加してカタールとの国交を断絶したことを評価するツイートをしたそうなのですが、これまでのさまざまな報道を見るに、ISのテロを支援しているのは何もカタールだけではないのだろうと、むしろサウジアラビアあたりのカネとヒトが強く影響しているのではないかと、そう見えてしまうわけです。

ではなぜカタールが「切られた」のか?記事から読めるのは同国とイランとの関係で、アル・ジャジーラの存在も含めて言うと、サウジアラビアにとっては言うことを聞かない小者、に見えていたのかもしれません。

その動きを他ならぬアメリカ大統領が支持することの危うさをこそ、記事は伝えています。「超大国はその同盟国を、敵対する国とちょっとおしゃべりしただけでカンタンに捨て去るというイメージを与えることでアメリカの信用度を傷つけている」、と。

何でもよいからイランに関係するものを妨害することで、シーアとスンニの対立を深めておく、そうすることがユダヤの安定につながる、昨日はそんな読み解きについて触れましたが、もしもそうだとするならば、アメリカとカタールの二国間関係は一定の代償を含めて温存されるのではないかと思います(基地の存在もありますし)。でも、この記事が伝えているように、もしもそうでない方向に振れるとするなら、台湾や韓国を含めてこの事例に寒気を感じる国は少なくないのかもしれません。果たして日本はどうかというと?