新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

アメリカ社会と銀行

The Economist7月29日号のFinance and economicsには、最近アメリカの銀行が田舎の支店をどんどん閉鎖しているという傾向についての記事が載っています。

www.economist.com

記事の報じるところでは、都市部から離れた小規模な町や村(?)で、銀行の支店が閉鎖される例が相次いでいるとのこと。かつては全米で10万件ほどあった銀行の支店が、今や9万件まで減ってきているのだそうです。かの国で支払いの中心となる小切手決済を引き受けたり、地場産業の運転資金をサポートする役目を担う銀行がなくなる、というのは地域経済にとって結構重たいインパクトを持つ現象だろうと思われます。景気に直結する通貨の流通は、中央銀行が通貨供給を増やした段階ではなく、銀行が顧客企業の口座に資金を貸し付けたところが実際のスタートになるわけで、そう考えると銀行の支店閉鎖は、地場産業にとって不便をかこつに止まらず、国内経済の持続可能性を低めることに他ならないのだろうと思われます。

これはかの国の経済インフラが傷んできていることの証拠であろうと思って見ています。そして日本も以て他山の石とすべき話だろうと思います。かつてメガバンクが合併で支店合理化を行ったときには、都市部中心に有人店舗がATMに置き換わる等の変化がありましたが、人口減少の続く中、AI導入の影響もあって金融機関の大幅な人員削減が噂されているがその理由です。

そして合理化が真っ先に向かう先は、人口が減って地場産業が衰退する地方都市だろうと思われます。そして合理化が減らすのは人だけではありません。未来に向けた夢やモチベーション、街の勢いと言ったものを根こそぎ減らしてゆくのです。むろん、地元経済界は必死になってその流れに抗おうとします。そして例外的なケースではそれがうまく行く場合もあるかもしれません。しかしながら長期で見れば、全体が沈んでゆく流れは変わらないだろうと思います。

そのような傾向の中でどうやって経済インフラとしての金融機関を下支えするのか?インターネットは一つの答えなのかもしれません。AIもそうです。でもこれらは所詮「乗り物」あるいは「器」の話でしかなく、血の通った金融サービスを担保しようと思ったら、今の段階では結局人が介在しないことにはうまく行かないように思います。それをどうやってAIやネットのサービスに置き換えてゆくのか。そのあたりの移行経過を上手くコントロールできるかどうかが勝負の分かれ目になってくるのではないでしょうか。