新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

ハンガリーの選挙について思ったこと

The Economist誌4月7日号のEuropeはトップ記事でハンガリーの総選挙に関する予測記事が出ています。

www.economist.com

日本のメディアで速報されているとおり、与党が圧勝してオルバン首相の続投が決まったというニュースは耳にされた方も多いと思います。日本とあまり関係が強いというわけでもないハンガリーの選挙結果がニュースで取り上げられる意味はどこにあるのか?と考えたとき、いくつかの読み解きが頭に浮かびます。

まず、現与党が移民排斥を訴えているということの意味について。日本も移民受け入れに消極的な政策を取ってきましたが、日本の場合はそれをかいくぐって多くの外国人が住むようになってきているのはご承知のとおりです。ハンガリーはちょっと逆で、そもそもが移民の多い国だったのだそうですが、最近の移民は質的に違う(イスラム系)ということなのかと思います。

つぎに、ハンガリーの場合は対EUということになりますが、地政学的な面で自国のそれと利害関係が一致しない国際世論との対峙というのがありまして、移民受入れ問題もそうだと思うのですが、国益追求を旗幟鮮明にするリーダーを立てることにより、国際社会の求めるものと自国の国益をどのように折り合いをつけてゆくのかという点があります。

現在ハンガリー経済は好調だそうですが、その要因の一つがEUへの出稼ぎにあるという分析があり、だとすると出稼ぎは良くて移民受け入れは嫌という「いいとこどり」との批判もあるのではないかと思われるところ、仕方ない話かもしれませんが選挙で国民はやっぱり与党を選んだということのようで。

The Economistも指摘するように、歴史的にはハプスブルグやボルシェビキにやられっぱなしだったことも、外交面でハンガリーをかたくなにしているのかもしれません。東アジアにもそういう例はあったりしますし・・。

それでも、「反リベラル」を前面に出す与党の戦いぶりはいかがなものかという国際メディアの論調は一貫しているように見えます。

選挙の仕組みが与党有利に作り変えられた、反与党の要である若年層が出稼ぎで不在のため与党に有利になった、はては学生時代に奨学金を出してくれた恩人であるジョージ・ソロス(リベラル派の後ろ盾)を激しく攻撃して選挙を戦うオルバン首相の人格にも疑問符が付けられていたりするようです。

そうした背景も含めて、自国の国益追求を強く訴える小国(ハンガリーは人口1000万人くらい)とも、しっかりと粘り強く調整を図ってゆくであろうEUの対応ぶりは、国際社会なるものの運営を考える上で参考になる事例ではないかと思います。やがて流動的な場面が一気に顕在化するかもしれない東アジアにおいて、日本がその立ち位置を考える上でも。