新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

中国と言う名の惑星

7月28日号のThe Economistは、道路に囲まれた地球のイラストに被せて「Planet China(中国と言う名の惑星)」という刺激的なタイトルをつけています。記事としてはLeadersのトップとBriefingを使って、中国が進める一帯一路政策(Belt and road initiative: BRI)について、警戒心を露わにした報告を載せています。

www.economist.com

曰く、最初はシルクロードの再興みたいな切り口だったのに、最近は北極海さらにはサイバー世界にまでその適用範囲を広げていること、OECD諸国による伝統的な国際協力と違い、人権や腐敗についてほとんど何も言わないこと、建設工事には中国の労働力を使うこと、そして何より、借款で受益国を締め上げ、支払えないと租借地の占有などの強硬措置を取ることなど。スリランカが借款を払いきれず、2017年に中国が運営権を取得した事例を想起させる内容となっています。ミャンマーでも、チャオピュー港の開発に巨額のBRI資金が投じられているのだそうですが、果たしてミャンマー政府はその負債を計画通りに返済できるのか。そしてもし、返済できなかった場合に待ち受けるものは何なのか。

ごく最近、パキスタンの総選挙で与党が負けたのは記憶に新しいところです。メディアが伝えるのは汚職への忌避感や野党党首が元クリケット選手だったことくらいですが、なぜ汚職への忌避感が大きくなったのか、なぜ国を代表するスポーツ選手出身の政治家が国民に支持されたのか、そのあたりの読み解きはまだなされていませんが、ぜひとも話の裏を聞いてみたいところだと思っています。閑話休題

私は長いこと、建国の国是に瑕疵のある中国には、世界を納得させるだけの思想的貢献ができない(構造的にムリ)、ゆえに中国は一時的に覇権を得てもそれを保全できないとの主張を続けてきましたが、BRIが世界に問う哲学は、民主主義を否定しても、カネが儲かれば良いじゃないか、独裁政治でも、国と国民が満足すればそれで良いじゃないかという、言ってみればスター・ウォーズのダークサイドに近いものであろうと見ています。ゆえに、どんなことがあっても日本は国としてBRIにコミットすべきではないと考えます(AIIBはその最たるものです)。もっとも、民間企業が事業リスクの範囲で何かをするということまでは止め立ていたしませんが(日本は自由主義経済の国ですし)。

翻って、2020年のオリンピックまではなんとか走り続けることができそうな日本からは、今に至るまで2030年そしてその先を見通した話は聞こえてきません。BRIが頓挫したとき、そこにいる中国はもはや潜在的な脅威ではなく、現実的な危機そのものになっている可能性が高いと思います。それにどう対峙するのかは、長い時間とおカネをかけて、じっくりと準備すべき重要課題なのですが。