新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

難しい課題

The Economist誌10月12日号のLeadersそしてScience and technologyのページには、先ごろまとまった国連気候変動枠組み条約政府間パネルによる報告書についての解説記事が出ています。日本でも大手メディアがこぞって伝えた内容ですが、改めて取り上げてみたいと思います。

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一寸驚かされたのは、報告書の規模ですね。44ヶ国から参加した91名の研究者によりまとめられた1200ページの報告書は、作成にかかった3年のうちに世界中から4万件のコメントがあったそうです。

次に感じたことは、以前だと科学的に信ぴょう性が疑問視されることもあったと思うのですが、報告書の1割について以前議論は残るものの、残りの9割についてはほぼ100%の人が合意するというくらい、気候変動とその影響についての問題意識は全世界的に高まっていることへの期待感です。

1992年の地球サミット以来、非公式ながら数値的な共通指標とされてきたのが「産業革命以前にくらべて摂氏2度の平均気温上昇」という考え方だったのが、詳しい分析ができるようになったこともあって、今回の報告書では「1.5度までに押さえよう」という考え方が強く打ち出されているとのこと。

この差は意外に大きく、たとえば2度の平均気温上昇では全世界のサンゴ礁の99%が死滅することが予想されているところ、1.5度に止まれば10~30%のサンゴは生き残り、その後の気温が安定すればサンゴ礁そのものの回復も期待できるのだとか。

ただ、現状のペースで温暖化が進むと、摂氏3度を超える平均気温上昇が予測されているところなので、それを2度よりさらに下、1.5度に押さえるためには大変な努力が求められることは火を見るより明らかです。

たとえば二酸化炭素の回収・貯蔵技術について。随分前から話は出ていますが、実際に運転している事例はまだ多くないようですし、それまではタダで排出していたものにおカネをかけて集めることをどうやってファイナンスするのか、も難しい問題です。

以前から私が主張しているのが原発の再稼働なのですが、羹に懲りて膾を吹くということわざがあるとおり、そもそも議論の対象とされていないようなところがあり、どうしたものかと思わされてしまいます。

電気自動車の開発も、再生可能エネルギーの普及も、それはそれなりに意義のあることですし、重要な課題だと思うのですが、それらを総動員しても難しい目標が1.5度であることをまずは共通認識化すること、でしょうかね今の僕らにできることと言えば。