サウジアラビアの憂鬱
10月27日号のThe Economist誌は、巻末のObituaryで先ごろトルコのサウジアラビア大使館で殺されたジャーナリストのジャマル・カショギ氏の人となりについて伝えています。
曰く、そもそも体制批判を行うタイプのジャーナリストではなかったとのこと。元来は穏健なジャーナリストとして、どちらかというと体勢寄りの立ち位置にいることが多かったようなのですが、近年になってカタールとの対立関係なども含め、本来アラブのリーダーを自認していたはずのサウジアラビアのスタンスが次第にそうでなくなることへの警鐘を鳴らすようになっていったそうです。
2015年には自らバーレーンで立ち上げたニュースチャンネルが、地元の政治運動家にインタビューしたというだけで開局当日に閉鎖されるという経験もしたのだとか。
その後、モハメド・ビン・サルマン皇太子が実権を握るに至って、カショギ氏は皇太子への批判を隠さなくなったのだそうですが、それはサウジアラビアの王族の誰もがこれまで当たり前だと考えてきた、政治的自由や透明性を担保しようとする意見の枠を出ないもの、だったようです。
自らの結婚のため、抱えていた3件の離婚(!)に決着をつけることが大使館訪問の目的だったのだとか。
サウジアラビアを巡って、この記事のような全体観を伝えてくれる報道は、日本語メディアではたぶんお目にかかれないのではないかと思います。そうみると今回の事件は、今後彼の国に起きるかもしれない大きな変化の序曲、なのかもしれません。