気候科学小説、の不気味さ
いささか古い記事ですが、4月4日号のThe Economistは、Books and artsのページでScience Fiction (SF小説のこと、日本語では空想科学小説、ですかね)ならぬClimate Fictionというカテゴリーの文学について紹介しています。
例えば、こんな具合です。
「・・・次の年の冬は雨だった。寒さはマイルドで心地よかった。でもただ雨が続くだけだった。それが、私たちが冬を失った年だった。」
(ルイーズ・エルドリッチ ”Future Home of the Living God”より、日本語訳は私)
何とも言えない不気味さが漂いますよね。たとえばですが、私たちが向かおうとしている未来は北極から氷山が消え、シロクマが絶滅し、サンゴがなくなり、海の生態系が一変する、みたいなことも多分同時に起きているはずの世の中ですから、それはどんなフィクションより迫力はあるだろうと思うのです。
ジョン・ランカスターの「壁」という小説では、イギリスの海岸線に壁が建設され、それは海水とそして押し寄せるボートピープルを防ぐためのもの、という設定でお話が進むのだそうです。
今はまだ、SF小説のバリエーションみたいな感覚で読んでいられますが、そう遠くない将来にSFから現実へと、同じ小説のカテゴリーが変わってくるのかもしれません。