読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

トランプ政権の移民政策について、具体的な話

The Economist電子版は、米トランプ政権の新しい大統領令により、専門的な職能を持つ外国人技術者へのビザ(H1-B)発給要件を改めることについて、洞察の利いた記事を載せています。

記事によると、H1-Bビザはコンピュータサイエンスなどを中心に高度な技術者を呼び寄せることにある程度成功していたようですが、①年間85,000人という「枠」があり、ビザ発給はくじ引きだったこと、②ビザでは最低賃金が年間6万ドルと決められていたところ、取得者の多くがインドIT企業に勤める技術者で、最低賃金スレスレの給料しかもらっていなかったことが指摘されています。この制度で最も裨益したのは、年6万ドルで世界の優秀なIT技術者を囲い込んだインドのIT企業だった、というのが記事の読み解きです。

制度改革後は、審査が厳しくなることに加えてくじ引きから貢献可能性へと審査基準が変更されると記事は伝えています。アメリカ企業にも、インスタグラムなどH1-Bで裨益した企業はあるようなのですが、発給がくじ引きによるものだとすると、たくさん応募した会社がたくさん裨益するという構造は残ってしまうと思われることから、貢献可能性を審査する方式に改められるとすると、やはりアメリカ企業の利益になる応募者が優先的にビザを取得できるようになるのでしょうね。

日本人的な感覚で言えば、今までくじ引きだったことがむしろ驚きに思えますが、年収6万ドルで今のアメリカに住むというのも、ものすごく楽というわけではないと思います。ダブルインカムになればだいぶ話は違うのかな?

将来的に、移民による経済の下支えが不可避かもしれない日本にとっても、参考になる事例ではないかと思います。

 

量的緩和の終焉、の伝え方について

The Economist4月17日付電子版の解説記事には、アメリカの連邦準備制度理事会(FRB=Fedと呼ばれる)が、利上げに伴って保有する長期債の売却を視野に入れていることを、「バランスシートの縮小を図っている」という言い方で伝えています。所謂量的緩和がその終息段階に入りつつあるということで、日本では「利上げの影響」という言い方で報道されている例が多いと思います。

世の中に存在している「おカネ」は、富と交換できるという意味で言ってみれば「債務」なのですが、それは国の財務状態をバランスシートで表そうとすると右側(借金などを載せる場所)に載せられるべき項目になります。それを縮小しようとする場合、当然ですが左側(財産などを載せる場所)にある項目を売却するなどしてこちらも縮小し、「バランス」を保つことが求められるわけです。保有する長期債などは、普通でもそうですが財産にあたるので、これを売却することで借金にあたる「おカネ」の量を減らすということですね。

(ちなみに、当たり前ですが現金は「財産」です。ということはその発行元が同じだけの「債務」を負っている、ということになりますよね。)

事務系のサラリーマンや会社経営に詳しい方などには、このような表現の方がわかりやすいのではないかと思うのですが、大手の新聞なども含めて日本のメディアはどうしてだか国の財政についてこのような言葉遣いで報道することがありません。学者が使うようなマクロ経済学の用語だけで記事を書くので、「今何が起こっていてそれは何のためなのか」がちょっとわかりにくかったりします。的確であることよりも、正統であることに縛られている、というようなイメージですかね。何とかならないものですかね、ホントに。

トランプ外交とは?

4月15日号のUnited Statesには、シリアへ巡航ミサイルを撃ち込んだトランプ政権の対応と、そこに至るまでの外交を俯瞰して、果たしてトランプ外交はどのようは方向性にあるのかを論じる記事が出ています。

毒ガスで無辜の民を殺戮する政権に、問答無用の巡航ミサイル攻撃で応えるのが彼流のやり方であると即断しない方が良い、というのがThe Economistの見方です。常々彼が言っている「アメリカ・ファースト」という考え方に立てば、今回の対応はひとつのオプションを示したものに過ぎない、すなわち状況に応じて国益にかなうあらゆることを、彼はしたりしなかったりするのだ、ということなのですが。

そう考えると、たとえば朝鮮半島におけるアメリカの国益とは何なのかと考えることがこの先のトランプ外交を読むうえで一つのカギになってくるのではないかという見方ができるのではないかと思います。だとすると、対北朝鮮もそうですが対韓国、特に大統領選挙の帰趨が大きな要素になるのではないでしょうか。

確かに軍事的な緊張は緊急性が高いわけで、世間の注目も集まりやすいのは確かだと思います。高い注目度と相まって派手な軍事演習やミサイル発射などの影響で、日本の各種報道では「アメリカと朝鮮半島」というとどうしても北朝鮮のことが中心になってしまいがちですが、むしろ韓国を含む半島の今後をどうみるか(どうするか)というあたりにアメリカの戦略の力点がおかれているのではないだろうか、北朝鮮をどうするかについては韓国大統領選と表裏一体の流れの中で決まってゆくことなのではないだろうか、そんな見方ができるように思います。

 

とある先進技術の終わりかもしれない出来事

4月1日号のThe Economist誌はBusinessで、連邦破産法11条の適用が決まった米・ウェスチングハウス社の核エネルギー技術と原子力発電の将来について、現状を詳しく伝えながら「再開には長い時間がかかるかもしれない」と、悲観的な見方を伝えています。

それによると、親会社だった東芝のスキャンダルもさることながら、原子力に関する新たな規制の強化や海外プロジェクトの停滞などでウェスチングハウス社の持つ技術がビジネス的に立ち行かなくなったこと、その費用負担を巡る東芝の対応は日米外交関係に影響を及ぼす可能性もあることなどが触れられています。

地球温暖化対策などを含めて、あると考えられていたニーズも再生可能エネルギーの普及や技術革新などにより、原子力発電が再び脚光を浴びる可能性は日々小さくなってゆくということなのかと思います。今回の事件は、ことによるとかつては花形だった先進技術が社会的な要請によって使われなくなるという変化を象徴するものなのかもしれません。

 

 

相対的に

4月1日号のThe Economistは、ふつうヨーロッパの内輪話についての記事が載るCharlemagneに日本との通商交渉に関するちょっと冷めた見方の記事を載せています。

そういえば、さきごろ(3月19日から21日)安倍首相がEU諸国(ドイツ、フランス、ベルギー、イタリア)を歴訪したのですが、多くのメディアが取り上げたにもかかわらず、日本でもこのニュースは後を引くことなく「いつもの話」として驚きを伴わずに受け入れられていると思います。

EUも日本もトランプ政権から包括的な自由貿易交渉を棚上げにされたという点では似たような立場に置かれているわけですが、今回Charlemagneが注目したのはアメリカを含む規模の大きな交渉が頓挫したことにより、2013年から続けられている日EU経済連携協定(EPA)の交渉が図らずもクローズアップされることになった、という展開ですね。

Chalemagneは、おそらくヨーロッパ人の常なのではないかと思うのですが、あまり楽観的な見方はいたしませんで、アメリカとの交渉頓挫を受けて日本との交渉妥結を急ぐ中で日本側へ譲歩すると、日本市場への参入を期待していた欧州の畜産農民にとっては悪いニュースになるだろう、という予想を立てています。

また、メルケル首相が冷遇されたのに比べると安倍首相はトランプ大統領から破格の厚遇を受けていることなどをあげ、日EUの鉱床なのに安全保障問題とも絡んでアメリカの意向が忖度される事への警戒感も懸念材料に挙げています。

本来、自由貿易の旗手を自任するThe Economistですから、もう少し応援してくれても良さそうなものなのですが、TPPなど大物が行き詰まってしまった中で相対的に浮かび上がったという経緯を考えると、扱いとしてはそんなもの、なのかもしれませんね日EUの協定は(個人的には、チーズとワインがもう少し手に入りやすくなってほしいものだと思っています)。

メッキが剝げるとき

3月25日号のThe EconomistはLeadersで多国間外交に消極的な米トランプ政権の姿勢に対する危機感を伝えていますが、同時にThe Economist電子版の記事では先ごろ報じられた健康保険制度改革(いわゆるオバマケアに対する対案)の頓挫について、先行きを不安視する論評が出ています。

多国間外交におけるアメリカの「出し渋り」は今に始まったことではなく、そもそもレーガン政権の時代から何かというと「支払わないアメリカ」というパターンは繰り返されてきていました。ブッシュ政権は、少なくない多国間機関からアメリカを脱退させましたし、オバマ時代を通じても、約束した拠出金を最後まで払わない、というスタンスはあまり変わっていなかったのではないかと思います。

温暖化対策や多国間の自由貿易協定に懐疑的なトランプ氏の姿勢は、この動きを強めると言うことでしょう。パリ協定の停滞が更なる温暖化ガスの排出につながることは分かり切った話だと思うのですが、米国経済を優先する自身の政策とは相容れないという判断に揺らぎはないようです。

この点について、The Economistが懸念する「対抗勢力としての中国の台頭」について、確かに中国は、たとえばパリ協定をアメリカ無しでリードして、その実現を果たすだけのポテンシャルがあるのは事実だろうと思います。でも果たして、中国にそれができるのか?他国が受入れ、中国のホストぶりを認めるような提案、地球全体のことをケアするような政策が果たして出てくるのか?

私はここが分水嶺だと思っています。政策の基礎となる哲学の部分で、普遍性があり他国にとって受容しやすい要素をあまり多く持っていない中国(儒教+東洋+共産主義)からの提案が、南北アメリカ、欧州、西アジアそしてアフリカに受け入れられるものになるのか?おそらくインフラ的な部分(政治体制や経済の枠組み)でリーダーシップを取ることは難しいと思うのですが、付加的な要素(気候変動対策や地域の貿易自由化など)ではまだ活躍の余地はあるのだろうと。だとした場合、中国政府にとっては「アメリカ抜きの世界貢献」を訴求するための恰好の機会として気候変動対策に取り組むモチベーションが生まれるのではないかと思われるのですが。

そのような状況にあって、健康保険問題で躓いたトランプ政権が次に直面するのは税制問題であるとThe Economistは説きます。ここで2連敗するようだと、ただでさえ低い米国内での支持率や期待値もぐっと下がる流れになるのではないでしょうか。そこで中国に(たとえば温暖化対策について)出し抜かれるようだと、世界がアメリカを見る目は明らかに変わってゆくのではないかと思います。

運が良ければ

長い出張でちょっとご無沙汰してしまいましたけど。

さて、3月25日号のThe EconomistAsiaで東京都の小池知事を取り上げています。

記事は自民党の「内なる敵」というタイトルで、東京都を舞台に展開される自民党都連との対決は、将来のリーダーシップキャンペーンではないかという見方を示しています。

片や安倍後継が「見えない」とされる自民党本体を考えたとき、そうみる向きは日本でも少なくないのだろうと思います。ただ、運が良ければとThe Economistが最後に付け加えたように、都政が抱える数々の問題は出口が見えにくいものばかりです。たとえば豊洲問題は、建物ができてしまい日々おカネがかかっている分だけ先送りにはしづらい話であり、どのような決断をするにせよ強い批判を免れるわけには行かない状況にあると思います。その影響は間接的ながら、日々の都民の暮らしに及んでいることを実感する必要があるのだろうと思います。

記事が「運が良ければ(if her luck holds=彼女の幸運が続くなら)、」とするその運は、案外小池さん個人の運ではなくて、彼女とともにいる都民あるいは国民の運のことを言っているのかもしれません。