新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

気候科学小説、の不気味さ

いささか古い記事ですが、4月4日号のThe Economistは、Books and artsのページでScience Fiction (SF小説のこと、日本語では空想科学小説、ですかね)ならぬClimate Fictionというカテゴリーの文学について紹介しています。

https://www.economist.com/books-and-arts/2019/04/04/can-the-novel-handle-a-subject-as-cataclysmic-as-climate-change

例えば、こんな具合です。

「・・・次の年の冬は雨だった。寒さはマイルドで心地よかった。でもただ雨が続くだけだった。それが、私たちが冬を失った年だった。」

(ルイーズ・エルドリッチ ”Future Home of the Living God”より、日本語訳は私)

何とも言えない不気味さが漂いますよね。たとえばですが、私たちが向かおうとしている未来は北極から氷山が消え、シロクマが絶滅し、サンゴがなくなり、海の生態系が一変する、みたいなことも多分同時に起きているはずの世の中ですから、それはどんなフィクションより迫力はあるだろうと思うのです。

ジョン・ランカスターの「壁」という小説では、イギリスの海岸線に壁が建設され、それは海水とそして押し寄せるボートピープルを防ぐためのもの、という設定でお話が進むのだそうです。

今はまだ、SF小説のバリエーションみたいな感覚で読んでいられますが、そう遠くない将来にSFから現実へと、同じ小説のカテゴリーが変わってくるのかもしれません。

日本対アルゼンチン、という組み合わせとは?

たとえ世界を意識する仕事をしていたとしても、日本にいる限りは「日本とアルゼンチン」という対比関係が何を物語るのかについてピンと来る人はそう多くないだろうと思います。

3月29日号のThe Economistは、Finance and economicsのページでしっかりとこの二国についての対比分析をしてくれていて、思わず膝を打つような切り口もあるので今日はこれを紹介したいと思います。

https://www.economist.com/finance-and-economics/2019/03/30/how-argentina-and-japan-continue-to-confound-macroeconomists

私も、目次でこの記事を見かけたときに「ラグビーW杯の組み合わせかな?」と思ったくらい、両国は世界のラグビーでは常連国でありながら常勝国ではないという共通点があるのですが、記事の中身は純度の濃いマクロ経済のお話でした。そのへん、流石にThe Economistの面目躍如ではあるのですが。

記事曰く、日本とアルゼンチンはマクロ経済学の通用しない2か国である、ということのようで、実際にノーベル経済学賞を受賞したサイモン・クズネッツ(建設需要による20年周期の経済変動:クズネッツ循環を提唱した人)が言ったところによると、世界には4種類の国があるそうで、それは先進国、途上国、アルゼンチンそして日本、なのだそうです(笑)。

アルゼンチンは、いくら金利が上がっても消えない構造的なハイパーインフレ、低貯蓄率と為替変動に弱いペソ、日本はいくら人手不足が続いても、いつまでたっても消えないデフレ、現金をため込むばかりの国内経済と為替変動に強い円という、マクロ経済学の理論が通用しない状況が長く続いていることで、はたから見ているとほかの国とは異なるメカニズムで動く「別の国」のように見えるのだそうです。確かに日本の場合、人手不足で賃金が上がればデフレはなくなるはず・・、なのですが、実際には全くそうなっていませんよね。

これをイギリス人の視点から見ると、どれだけ金利が上がっても貯蓄率が上がらず、投資に廻すおカネがない中で為替変動がインフレを刺激してしまうアルゼンチンの構造的な欠陥と日本のそれは、いつまでたっても良くならないという点において一緒じゃないの?ということのようです。

記事は結論として、クズネッツのコトバをもじって「世界には4通りの国がある、それは先進国、途上国、そして実際はどちらかに属しているのだが、自分たちをそうでないグループの国だと思っている二つの国である」、とイギリス流の皮肉で締めくくっています。

記事の言うことが正しいとすると、アルゼンチンは自分のことを先進国だと思っていても、実態がついてきていないということに加え、日本は先進国なのに、もしかして自分のことを途上国だと思っていませんか?という問いかけがなされているということになるのですが、うーん、これはひょっとして図星かも。

 

ビジネスから見た気候変動

2月23日号のThe Economistは、Businessでビジネスから見た気候変動対策の緊急性と、それにもかかわらず動きの鈍い現実について鋭い論評を載せています。

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二酸化炭素などの温室効果ガスによって引き起こされる気候変動、具体的には洪水やハリケーン、干ばつによる山火事や海水面の上昇などについて、ビジネスが受ける被害はもはや全く無視できないレベルに来ているという話があります。気候変動に対する耐性を研究したり、社会実装を急ぐ動きも目立ってきているようです。

The Economistによると、このままの状況が続くと多くのビジネスにおいて平均で企業価値が2-3%も毀損されるとの予測があるのだそうです。

ただ実際の動きはまだ鈍く、先駆者となることによって引き受けさせられる準備コストがそのまま競争上の負荷になることへの懸念は消えていないとのことです。すなわち、気候変動に対応するためのコストを計上していたら、競争相手がそれをしなかったことにより、たまたま災害が起きない場合に競争相手が勝ってしまうことへの懸念、とでも言うものなのですが。

そのような企業の態度に対するThe Economistの結論は「やがて未来が訪れたとき、対策を取った者への報酬は砂に頭を突っ込んだだけの者に比べて確実に大きなものになるだろう」とのご託宣です。

日本でも、このところ毎年夏には大きな災害が起きています。すでに産業界が被った被害も深刻な事例が出てきていると思うのですが、それがさらに悪化しない保証はないのが現実だと思います。中国や東南アジアも例外ではないでしょう。だとすると、経営者が直ちに取るべき戦略は、自ずと見えてくるのではないでしょうか?

ひとつの考え方として

2月23日号のThe Economistは、LeadersとBooks and artsの記事を使って企業と地球温暖化、気候変動が人類に与える影響に関する本について取り上げています。

元来、The Economist環境保全について後ろ向きな記事が多く、気候変動についても最初のうちはだいぶ腰が重い印象もあったのですが、ここ数年は地球温暖化による災害などが無視できない規模になったこともあってか、積極的に警鐘を鳴らすようになりました。

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翻って日本では、羹に懲りて膾を吹くが如く原発再稼働が禁忌扱いされているため、その間電力を賄う手立ては圧倒的な量の化石燃料を使うしかないのが現状です。

気候変動への対応を真剣に考えるなら、地震対策を施したうえで一日も早く原発を全面稼働するのが正解だと考えているのですが、なかなかそうは行きませんね。

ファーウェイだけではなく?

The Economist 2月2日号のLeadersは、現在世界の耳目を集めているベネズエラの混乱に関する記事がトップです。3番目にファーウェイ事件の現状に関するかなり厳しい論評が載っているので、今日はその記事について。

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記事を読んで改めて認識させられるのは、果たしてファーウェイが問題のある会社なのかどうかではなく、すでに5Gネットワークの構築について同社が圧倒的な競争力を有していること、にもかかわらず技術の盗用やスパイ行為などについて明らかな違法行為が繰り返されていたこと、そして有事の際にはネットワーク管理について大きな脅威となることなど。さらに議論が同社をどのように締め出すことができるか、そのためのコストはどうなるのかというところに行っているという点ですね。

幸か不幸か(?)、日本ではすでにファーウェイ対策が取られつつあり、警鐘を鳴らす動きも先行していたようです。

ここで気になるのは、このような会社は果たしてファーウェイだけなのか?ということではないかと思います。なにせ国の仕組みが違うので、日本の常識では軽々に判断できない要素があり、慎重な対応が必要なのだろうとは思いますが、いずれにしても要注意だと思います。

セグウェイに起こったこと

11月22日号のThe Economist誌はBusinessで、アメリカで始まった立ち乗り2輪車(セグウェイという名前をご記憶でしょうか?)の技術が、いまどのようなビジネスになりつつあるのかについて、いささかビックリの内容とともに伝えてくれています。

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記事によると、現在セグウェイ社を所有しているのは中国のキックスクーター製造メーカーだったナインボットという会社だそうで、立ち乗り2輪車の特許侵害についてセグウェイが訴訟を起こした直後に買収した(当然ですが訴訟は必要なくなります)とのこと。ちなみに買収総額は公表されていないそうですが。

ナインボットは、現在世界各地のライドシェア会社などにOEMでスクーターを出荷しているそうですが、経営の方向性としてはメーカーというよりもむしろAIとロボット技術を使ったベンチャー企業という感じで、現在投資を進めているのがオフィスの中まで郵便や物を届けてくれる自動配達システム、だそうです。経営者によると、立ち乗り2輪車の技術はセグウェイと訴訟になった段階ですでに自社開発していたのだそうですが、買収はセグウェイが持っていた400件にも上る特許をそのまま自分のものにできたという点でメリットがあったようです。

いわゆるGAFAを含めたアメリカ発のニュービジネスは、成長軌道に乗った会社は当然ながら、セグウェイのように将来を期待されてその後どうなるか、という企業くらいだと中国に買われてしまったという事例はこれだけではないのではないでしょうか。

日本勢で頑張っているのはソフトバンクくらいかもしれませんが、ナインボットにとっての立ち乗りスクーターのように、成長性のあるビジネスは買ってきてそれから大きくする、という取り組みもまた「あり」なのだろうと思います。そう考えるとビジネスの世界はまた面白い。

サウジアラビアの憂鬱

10月27日号のThe Economist誌は、巻末のObituaryで先ごろトルコのサウジアラビア大使館で殺されたジャーナリストのジャマル・カショギ氏の人となりについて伝えています。

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 曰く、そもそも体制批判を行うタイプのジャーナリストではなかったとのこと。元来は穏健なジャーナリストとして、どちらかというと体勢寄りの立ち位置にいることが多かったようなのですが、近年になってカタールとの対立関係なども含め、本来アラブのリーダーを自認していたはずのサウジアラビアのスタンスが次第にそうでなくなることへの警鐘を鳴らすようになっていったそうです。

 2015年には自らバーレーンで立ち上げたニュースチャンネルが、地元の政治運動家にインタビューしたというだけで開局当日に閉鎖されるという経験もしたのだとか。

 その後、モハメド・ビン・サルマン皇太子が実権を握るに至って、カショギ氏は皇太子への批判を隠さなくなったのだそうですが、それはサウジアラビアの王族の誰もがこれまで当たり前だと考えてきた、政治的自由や透明性を担保しようとする意見の枠を出ないもの、だったようです。

 自らの結婚のため、抱えていた3件の離婚(!)に決着をつけることが大使館訪問の目的だったのだとか。

サウジアラビアを巡って、この記事のような全体観を伝えてくれる報道は、日本語メディアではたぶんお目にかかれないのではないかと思います。そうみると今回の事件は、今後彼の国に起きるかもしれない大きな変化の序曲、なのかもしれません。