新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

聞き違いかな?

ネットで流れているThe Economist9月9日号のLeadersには、このほどアメリカのトランプ大統領が廃止を宣言した、不法移民の子女に対するアメリカ滞在許可を認めた大統領令を巡る解説が出ています。それによると、これらがアメリカで起業できている確率は一般のアメリカ人の2倍ほどもあり、アメリカ経済への貢献度も大きいのだそうです。しかしながら、不法移民であることを理由に彼らを送還しようとすると莫大な経費が掛かるのだとか。現在の移民に関する法律がその事実を直視できておらず、法律として役に立たないものになりつつあるのを、大統領令というパッチ当てで凌いだのがオバマ大統領であったところ、トランプ大統領は「それじゃあダメだろう」ということで6か月と言う期限を切って議会に責任ある対応を促した、というのがThe Economistの見方です。

日本のメディアは、これがトランプ大統領の移民いじめであるかのような報道をしたように思うのですが、それは私の聞き違い?

ちょっと示唆的かも

8月19日号のThe Economistは、Chinaの記事で古典文化への再評価をはじめた中国政府の動きを紹介しています。曰く、儒教の教科書(弟子記?)などを使って道徳教育に力を入れ始めたことや、古典文化を再評価する動きなどについて。

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確かにThe Economistが読み解くように、反日教育にその存在意義を見出すというやり方も、反日運動の暴力化などのリスクが高く、これ以上「国是」としての使い道がないことについて中国共産党もそれなりの問題意識を持っているということの現れ?と見えなくもありません。でも、長らく古い文化を否定することでやってきた自身の過去と上手く決別できるのか?一寸注目かもしれません。

バノン主席戦略官の辞任

週末の朝、日本のニュースでも報じられたアメリカ・トランプ政権の人事問題について、The Economist電子版は早速その読み解きとともにトップで報じています。

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日本のメディアは、ただ辞任の事実と「これでトランプ政権は新たな痛手を受けることになった」的な解説を報じて終わり、でしたが流石にThe Economistはその原因や背景についての洞察を加えています。

曰く、周囲とトラブルばかり起こして一向に政策実現に向かわないバノン氏に愛想を尽かした、あるいはシャーロットビルでの白人至上主義者と反対者の騒動について、自らのツイッターやコメントで収集がつかなくなった大統領が、政権内の人種差別主義者とも言われたバノン氏に詰め腹を切らせた、もしくはその両方ではないか、との観測なのですが、バノン氏側は特に後者の解釈を嫌ってか、「辞任は10日以上前に決まっていた、シャーロットビルの事件で発表が遅れた」と説明しているようです。

政権内の過激な意見はこれで少しは緩和され、現実的な方向へと舵が切りなおされてゆくのかもしれませんが、元々保守系メディアで活躍していたバノン氏が表舞台から消え去るわけではないので、アメリカ国内には依然として影響力を及ぼし続けるだろう、というのがThe Economistの見立てです。

バノン氏は政権内にあって中国との対立を恐れない最大の強硬派だったということを合わせて考えると、もしかすると今後の対中国・北朝鮮政策がある程度影響を受けるのかもしれません。くしくも今週はアメリカで日米2+2が行われ、同じ時期にダンフォード統合参謀本部議長が日本を訪れている、という事実と併せて考えると、そのあたりに見えてくるものがあるような気がしますが。

落としどころは?

このところ、The Economistはアメリカのトランプ大統領に対してはっきりと反対する意見を強く打ち出すようになってきました。この週刊誌がいわゆる左派メディアでは決してあり得ないことは、過去にこのブログでお伝えしてきたことから言っても間違いないのですが(しばしば、言い過ぎなくらいに自由貿易・資本主義経済の守護者たろうとする)、対北朝鮮政策でチキンレースを演じたかと思えば、ベネズエラへの軍事的関与の可能性を示したりした末に、あろうことか人種差別主義者を擁護していると取られかねない発言を繰り返すなど、政治的なリーダーとして鼎の軽重を問われる事態を自ら進んで引き起こすその無軌道ぶりに、The Economistも愛想を尽かしたというところではないかと思います。

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この記事でThe Economistは、「トランプ氏は共和党員ではなく、所詮一人芝居のスターにすぎない」のに「共和党支持者の4/5がいまだにトランプ氏を支持している」状況においては「このところ最良の一部がそうしたように、今こそ共和党がトランプ氏をたしなめることができる。他の共和党関係者もその流れに従うべきだ。」とのご託宣です。なかなか落としどころも難しくなってきたような気がしますが。

支持者のみを支援する

The Economist電子版のトップは、さきごろアメリカ・バージニア州で発生した白人至上主義者と反対勢力の衝突事件を巡るトランプ政権の反応について、「結局自分の支持者を支援するという以外に信条はない」と断じています。

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これまでの大統領は、国難に際して団結を訴えることでそれを乗り切ろうとしてきたところ、トランプ大統領がしたことは自分の支持者のみを大事にするという姿勢であった、とするThe Economistの見方は、アメリカの内政を巡る危険度が増したことを示しているような気がするのですが、どうして株価は堅調だったりします。内政に足を取られる≒北朝鮮問題は進まない≒北朝鮮へのアメリカの先制攻撃はない≒株価は安定、という計算式でしょうか?

想定される悲劇

ネットで流れている8月5日号のThe Economistは、LeadersとBriefingの2本、計3本の記事を使って北朝鮮による核開発問題について報じています。

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記事が伝えるところによると、北朝鮮によるミサイル開発は想定以上に進んでいるものの、ICBMの実戦配備までにはまだいくつかの「実験」を必要とする段階だろうとのこと。とくに弾頭の大気圏再突入については、先日北海道の気象カメラがとらえた映像を分析するに「地上へ向けて加速し、地球の表面(海面?)に当たると小さな丸い物体と光る気体を放出し、暗くなって見えなくなった」のだそうです。

これがミサイル技術的に何を意味するのかは、記事を読んだだけではよく分かりませんが、安定的に爆弾を地表まで打ち込むにはまだ力不足である、ということなのでしょうか。The Economistの論調も、まだ完成した技術とはいえない、というトーンです。

もしアメリカと北朝鮮の間で武力衝突があるとすると、日本そして沖縄の米軍基地(およびそれ以外も?)、さらに韓国とくにソウルには大きな被害は免れないことと思います。記事の伝えるところでは、ミサイル発射段階での探知と迎撃はかなり難しいようで、韓国が急いで配備しようとしているTHAADよりも、日本海にいる潜水艦から発射される巡航ミサイルを使った迎撃のほうが効果的なのではないかとのこと。

また仮に今、そういう紛争があると軍人・民間人含めて10万人のオーダーで犠牲者が出るだろうとの予測もなされているようです。それでもなお、仮に直接の被害がアメリカ本土に及ばなかったとすれば、トランプ大統領は「アメリカは安全だった!」とツイッターに書きこむのでしょうか。

 

 

中国とロシア

あからさまな書き方をするメディアは、日本ではあまりお目にかかりませんが、海外ではそれがむしろ普通だったりします。The Economist7月29日号のChinaは、中国とロシアの関係そしてロシアが置かれた国際的な立場について、おそらく日本では絶対にお目にかからないあからさまな書き方で、その分析を伝えています。

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曰く、習近平プーチンは首脳同士として最も頻繁に会う間柄である、習近平は2013年にインドネシアで開かれた国際会議のときもプーチンの私的な誕生日パーティに招かれた、また両国が催した戦勝70年記念式典に相互に出席するなどその関係は深い、のだそうです。

その他にも;

①ロシアが日々衰えていることを、西側が認識していると同様に中国も冷静に見ている。ただアメリカがそれ(ロシアの自己主張)を無視してかかるのに対し、中国は衰えた核保有国が自分の頭痛のタネにならないように注意深くロシアとつきあっている。

②中国は、ロシアが冷戦後の体制へ挑戦しようとする(ウクライナ問題など)ことを歓迎してはいない(クリミア半島併合も未承認)。経済のグローバル化で最も裨益しているのは中国だから。

③中国はロシアから石油ガスと兵器を買っている。経済面の相互依存度は圧倒的にロシアの中国依存度が高い。政治と安全保障分野でのみ、中国はロシアの価値を認めている。

中央アジアは政治的にロシアの縄張りだったところ、「一帯一路」政策により中国の影響度が高まりつつある。

⑤極東ではかつてロシア人が中国観光に行きおカネを使っていたが、今や中国人がロシアでカネを使う時代に。

「衰退するロシア」というモデルについて無神経な西側(あるいは『それみたことか』、というふうに思っているのかもしれません)、用心深い中国(アメリカが対ロシアで抱えているような面倒を抱え込むのは御免)という違いは、かなりの部分で地政学的な差異によるものではないかと思われます。西側(ヨーロッパ)も中国も、ロシアからの石油ガスに依存する度合いが高いわけで、ロシアが今の地位にいられるのも石油ガスがあるから、という絵姿が浮かび上がります。

誰が誰に対して何を考えているか、みたいな視点での読み解きは、なかなか日本のメディアではお目にかかりません。今日の記事はぜひ英語で読まれることをお勧めします。