新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

トランプ大統領就任一周年

1月13日号のThe EconomistはLeadersのトップにトランプ大統領就任一周年についての論評記事を載せています。

www.economist.com

記事によると、暴露本の出版もそうだったと思いますが、この一年はいつ何をツイートされるかでハラハラしどおしだったとのことですが、とりあえず経済は好調、それでも選挙公約の多くはうまく行かず、パリ協定やTPPからの離脱など、The Economist的に言わせるとアメリカの利益とならないことに拘泥するなど、出来は中くらいではないかとのお見立てです。

官僚人事の停滞が影響している要素として、財界からの取り立てが相次いでいるそうですが、The Economistが警戒するのは、本来企業が支払うコストを社会に付け替える流れが出来ているのではないかという点です。なんだか議論が左派的ですが、The Economistをしてそういわせるだけの流れがあるということなのかなと。

ロシアゲートに関する特別検察官の捜査の行方や北朝鮮問題など、まだわからない要素はあるものの、だからといって不適格性云々でトランプ大統領を罷免するというような議論にはThe Economistなりの分別を持って「それはおかしい」との認識を示しています。二年目を迎える大統領の行く手には岐路ばかり、という状況のようですが、それが大国のリーダーの運命なのかな、とも。

とりあえず、経済が好調なのは悪い話ではないのだろうと思うのは、アメリカの外から見てるからですかね?

合計特殊出生率2.8を達成した日本の自治体とは

今朝はThe Economist電子版のトップ記事に出た日本の話題について。

記事が取り上げたのは、岡山県の北の端に奈義町という人口6000人ほどの町があり、出産に対して町がさまざまな支援策を講じた結果、出生率が2.8に達したというお話です。

www.economist.com

記事が取り上げるのは、さまざまな補助金を含む経済的支援に加えて、しっかりしたコミュニティの存在が妊婦さんの助けになった、みたいなお話ですが、それで何とかなるのなら、ぜひ何とかすべき状況であろうと思います。

ちょっと考えると、人口6000人の町で女性が半分として3000人、このうち妊娠・出産する年齢の女性が仮に1000人いたとして、生まれる子供は2800人。義務教育期間が12年あるので、一学年あたりに直すと2800÷12=233人となり、爆発的に大きな数ともいえないと思います。

現在の日本は、この数字が1.4くらいなのだそうで、そうすると計算上は一学年が116人くらいとなり、だいぶさみしい感じがしますね。現在は日本全国がこの趨勢にあって、人口は減少の一途、ということだと思います。

奈義町の例が補助金とコミュニティで子供を増やそう!みたいな政策の、モデルにならないものかと。そういう町になら、「ふるさと納税」しても良いかなという気になりますが。

中国と環境

新年1月6日号のThe Economistを読んでいます。

イランのデモについて、あるいはNHKの受信料問題についてなど、相変わらず感度の高いアンテナが張られているなあと思わされる記事が多い中で、中国の環境問題について二本の記事が出ています。

www.economist.com

www.economist.com

一つ目の記事は、生物多様性と昨年まで合法だった象牙取引の禁止がもたらした象牙市場の急落などについて。写真はロバの皮革で、中国ではロバの皮から取れるゼラチンが医薬の原料になるのだそうで(なおかつロバの頭数は増えているのだそうで)、そちらの市況は上がったまま、のようです。

さらには、中国が廃棄物の輸入を部分的に禁止したことが先進国に与える影響についても触れられているのですが、そこは先進国側がしっかり対応することで担保されるとすると、中国が環境に舵を切るのは世界にとって悪くない、という結論になっています。

二つ目の記事も環境に関係するのですが、経済学的には「外部不経済」とされがちな環境対策について、今のところインフレ懸念もなく、産業構造の転換(製造業からサービス業へ)を阻害する要因にもならず、中国経済は上手く対応できている、というのがThe Economistの見立てです。

たしかに、20世紀から今に至るまで世界のリーダーたりえたアメリカが、特にトランプ政権ではパリ協定から脱退するなど後ろ向きの姿勢を取りだしている中で、欧州を中心とする環境重視型の先進国に対し、経済運営と環境対策を両立させるという姿を中国が示しうるのであれば、それはアメリカ型自由主義経済よりも中国型社会主義市場経済が世界のためになる、というプレゼンテーションにもつながるものになりえるでしょうから、その意味するところは小さくないのではないかと考えます。

もともと欧州も、そして多くの途上国も、社会主義的な考え方に対する拒否感はアメリカほど強い訳ではありません。だとすると、21世紀初頭において安全保障、人権、経済の分野で常に国際社会から疑念を突きつけられ続けた中国が、2018年に至って環境という切り札によってようやくその劣位を払拭することになるのかもしれませんね。やや大げさに聞こえるかもしれませんが、それが歴史の転換点だと、未来の歴史学者が認識することになるかもしれない話であるように感じています。現時点ではまだ「もしかすると」的な話にすぎませんけど・・。

アイヌ語を学んで見えてきたもの

今日はちょっと趣向を変えて、The Economistの兄弟誌である雑誌・1843から、アイヌ語を学び出したというJonathan Beckmanさんの話。

www.1843magazine.com

インターネット上には、アイヌ語を含め絶滅の危機にあるマイナーな言語、たとえばインディアンのチェロキー語やチベット語の方言などを学べるサービス(Tribalingualというサイト)があるそうです。ワクワク感と興味にかられた(For the romance of it all,)Beckmanさんは、ここでアイヌ語を学ぶことにしたそうです。スカイプでその言語を研究している専門家と直接会話もできるようなのですが、その経験を通じて知る興味深い発見がたくさんあったようです。

彼によると、UNESCOの情報ではアイヌ語のネイティブスピーカーは世界で15人しかいない(!)こと、かつて沿海州からサハリン、千島を含む範囲で話されていたアイヌ語が今は北海道にしか残っていないこと、アイヌ語にはさまざまな方言があるものの、アルファベット16文字で表記可能なこと(表音文字なので日本語よりアルファベットの方が表記に向いている)、ゆえにとても簡単な言語であることなど。

アイヌ語に比べると、たとえば英語はアルファベット26文字を使いますが、ZやXなど、なくても済む文字がまだレガシー的に残っており、必ずしも合理性の高い表記法になっていないことや、外国語を学ぶときのレッスンが、「あなたのおばあさんはロバを持っていますか?」「あなたは赤い船が好きですか?」など、シュールな例文の集まりであることなども、この学習を通じて気づいた点だったようです。

確かに、私たちが学校で習った英語の例文も、かなりシュールなものが多かったです。「昨夜ジョンはあまりに遅く帰宅したため夕食が食べられなかった(食べりゃいいじゃん!)」「赤いクルマと黄色いクルマのどちらが好きですか?(おおきなお世話や!)」突っ込みどころ満載のこんな文は、日常生活ではほぼ絶対に使いませんよね。

アイヌ語を学ぶなんてヒマな人の時間の使い方、と言ってしまえばそれまでですが、ふだんは英語と日本語だけで完結してしまっているような空間にいると、ちょっと新鮮なお話に聞こえました。そのうち時間が出来たら、何かマイナーな言語に接してみようかな。

 

あけましておめでとうございます。

昨年後半は、個人的な事情もあってなかなかブログ投稿が捗りませんでした。今年は少しでも時間を見つけて、興味深い記事を拾ってゆきたいと思っています。

さて、新年一本目の投稿は、電子版のSchumpeterが予測する2018年のビジネストレンドについて。

www.economist.com

記事によると、特に大企業の動向としてですが、2018年にはそれまで研究開発中心だったAIなど先進技術が、むしろ企業の命運を決める重要なファクターとしての役割を演じるようになるだろうとのこと。

確かに、どこそこの企業がAIベンチャーを買っただの、AI活用の研究をしているだのといった報道が相次いだのが2017年だったと思います。それが2018年に早くも結果につながってくる事例が出てくるとすれば、目に見える変化と言えるのだろうと思います。

逆に、そうでない経営者は退場を余儀なくされるということのようで、たとえばフォードのマーク・フィールズCEOは(かつてマツダの社長もやりましたよね)は、The Economist誌によると「記録に近い収益にもかかわらず」、2017年に役員会で技術革新への取り組みが甘いとされてCEOを退任しています。

変化を読み、変化に大胆に取り組む。言うのは簡単ですが、そういう経営者でないと務まらない世界というのはまた、厳しい世界ですね。

アベノミクスへの評価

11月18日号のFinance and economicsには、アベノミクスの5年を総括する記事が出ています。基本的に日本で報道されているものとあまり変わらないのですが、よく読むとThe Economistならではと言える洞察が含まれています。

www.economist.com

曰く、株価の上昇や戦後最長となる成長の継続があること、期待されていたよりは遅いかもしれないが賃金が上がったこと、物価の上昇も少しずつ見えていること、雇用が増えたことに対して、インフレ目標2%には全然到達していないことなど。項目的には日本で報道されているものと大差ないのですが、例えば雇用について、女性や高齢者が労働市場に再参入することで人手不足が緩和されたこと、外国人労働者が100万人を超えたことなど。特に「焼き鳥屋の従業員にはベトナム人移民が雇用されている」との記述は日本のメディアでは出てきにくいそれではないかと思います。

普通に日本のメディアだけ見ていると、それは技能実習生だったり、留学生のバイトだったりするようなイメージがあり、本格的な移民について報道されることは少ない(というか、法律的にありえないことになっている?)と思うのですが、肌感的には「それは本当か?」と時々感じるほど、街に住む外国人は増えていると思うのです。むしろ、The Economistがサラリと書いたように、日本にはベトナム人の移民が居て、その人たちが人手不足の中で飲食小売業を支えている、と考えた方がしっくりくるくらいに。

何といっても水は低きに流れるわけで、そういう意味では仕方ない現象なのかもしれませんが、アベノミクスを評価するなら、経済的な指標だけでなく、そういった質的な変化も併せて考えるべきではないかと、ちょっと思わされた記事でした。

選挙によって安倍政権が背負ったもの

10月28日号のThe Economistは、Leaders そしてAsiaでそれぞれ日本の総選挙がもたらした結果について論評する記事を載せています。Leadersのほうは、今回の選挙結果について事実関係を伝えつつ、改憲への布石はまだ道半ばであることを指摘しています。

www.economist.com

The Economist的に言うと、少子高齢化が進む成熟した民主主義国家である日本は外交的脅威にはならないということのようで、それを踏まえてむしろ改憲とそれによる日本の安全保障分野での貢献可能性を歓迎する論調になっています。

Asiaのほうではしかしながら、選挙結果やその後の国内メディアの論調などを参照しつつ、経済そして少子高齢化への取り組みなど、短期的に優先される課題について出口が見えないこともあってか「選挙によって政権の正当性は確認されたかもしれないが、その負託(Mandate)は弱い」との結論です。

www.economist.com

いずれも妥当性の高い論評であるように見えますが、第一者たる日本国民としては、支持率の必ずしも高くなかった内閣に絶対多数を付与したのだから、それなりの強い負託を与えるべきところ、野党の自壊もあってこのような結果となったことについては憂慮すべき状況ではないかと懸念します。すなわち、十分な負託のない絶対多数は、与党の政治家に「たいした仕事がないのに絶対多数≒サボっていても良い」状況をプレゼントしたことに他ならないからです。

せめてもの成果として、短期そして中期的に大きなリスクを抱える東アジア地域にあって、外交的にブレない政権を保全したことは評価できると思います。がしかし、そのぶん内政面で低レベルの緩みや油断が出てこないか、そしてそれが政権の足を引っ張ることにならないか、というあたりが慢性的な懸念材料、と言えるのではないかと思いますが、果たして?