新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

援助に携わる者たち

国際協力に関わる仕事をしている私にとって、1月20日号の記事で外せないものが2つありました。一つはInternationalのページにある"Aid workers - Doing evil to do-gooders" (善行の者に対する悪行)という記事で、趣旨としては昨年夏にスリランカで起こった国際援助に関わる地元採用のNGO職員17名がスリランカ政府軍に虐殺されたことに代表されるように、NGOは言うにおよばず昨今は国連だろうと赤十字だろうと、紛争地では攻撃の標的となる傾向があるわけですが、このことに関する分析です。

危険が迫ると外国人が現地人を残して退避したりするシステムも手伝って、現地採用職員がこうむる被害の比率は国際職員のそれよりも高いとのイメージを抱かれがちです。実際は、現地職員の数が圧倒的に多いこともあり確かに現地職員の被害は実数としては大きいのかもしれませんが、比率的には国際職員のほうが危険にさらされているとの分析もあるとのことです。

記事では同様のことがジャーナリズムの世界についても言及されています。いわく、メディアは特派員の命をフリーランスライターや、通訳、ドライバーの命よりも重んじると(内輪の反省?)。ジャーナリズム業界から援助業界へ、一つの提案としてThe Economistは、フリーランサーに対する紛争地向け訓練を行っているロリーペック信託基金のような仕組みを援助担当者にも施しては、との意見を述べていますが、なによりも「軍隊も行かないようなところで」援助が行われている現状をこそ解決すべきではないか、という論調です。

いまひとつの記事は、10周年を迎えたBill & Melinda Gates Foundationの経営者、パティ・ストーンサイファー女史へのインタビュー記事(Face Value)です。
同財団が、設立10年を迎えて事業の方向性も安定し、ウォーレン・バフェットによる史上最大の寄付もあってさらに事業を拡大する中、なんとBill Gates夫妻にも常勤のポストを用意しつつあるんだそうで。ちなみに彼女も援助業界の人ではなく、元々はマイクロソフトでアプリケーション事業の責任者だったそうです。

私は常に現場あっての国際協力・援助だと思っていますが、二つの記事がハイライトした二つの違う世界もまた、違う意味で国際協力の現状を伝えてくれているように思いました。