新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

問題です。

3月10日号はLeadersおよびThe world this weekの短信と地域情報のページの3箇所に渡って安倍総理の「従軍慰安婦の強制連行に軍の関与があったかどうか疑問」という、いわゆる河野談話の見直し発言について誤報とも言える記事を載せています。短信をベタ訳でクオートすると;


「古傷  日本の首相であるシンゾー・アベは、1930年代および1940年代に日本陸軍のために娼婦として働いた約20万人の女性について強制はなかったと示唆し、近隣諸国および諸外国に対する狼藉を働いた(caused offence)。」


基本的にはLeadersも同様のトーンで書かれており、詳報では河野談話の引用もなく、むしろ小泉首相との違いに関する裏を読むような論評がなされています(余談ながら、今日の日本を欧米でも有名な小泉政権から紐解くには判りやすい分析ではあります)。

一方、日経新聞やNHKが伝えるところでは「河野談話」の見直し、すなわち軍当局による強制があったかどうか不明、という一線は引かれているようで、なんでこれが「強制の全否定」という、あからさまな間違いとして報じられたのか。The Economistの東京特派員をしているDominique Zeagler氏は経験豊かなジャーナリストで、こんなことを言いそうな人物には見えないのですが、Lettersに投稿するだけの価値はあるかもしれません。あるいはすでに外務省あたりが動いている可能性もあります。

深読みをすると、日本との取引について何かトラップが必要だったのか、との疑念すら沸きます。まさかとは思いますが、北朝鮮のテロ指定国家解除に向けた日本の口塞ぎ、でもないでしょうに。いずれにせよ国連安保理改革も含めて、安倍首相が発言しにくくなるような環境づくりにはもってこいの「誤報」です(そういう目で見ると、安倍首相は就任後どうもアメリカとの付き合いをなおざりにしているように見えるところがある、というのは私の気のせいでしょうか)。