新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

科学の見た宗教

3月22日号です。経済記事の最後にどーんと「何が悪かったのか」と言うタイトルで、サブプライムローン問題に端を発する米経済の落ち込みについて多極的・多面的な報告が載っています。事実関係はおおよそ日本で報じられている内容と大差ないように思えるのですが、発生してしまった信用収縮に対する抜本的な手立てを、たとえFRBと言えども持ち合わせているわけではないと言うことは言えるようですね。日本の「失われた10年」との差は、むしろ問題が明らかになった後の対応に現れてくるように観測しているのですが、今後どうなりますか。

さて、個人的に面白かったのはScience and technologyが書いた(今週はこの記事一本でした)「科学と宗教について」ですね。脳科学、心理学、社会科学等のさまざまな領域からアプローチして見えてきた宗教の、高度な社会性は注目に値する点だと思います。本来無神論者が多い科学者にとって、宗教は高次の社会的構成要素である、とされたとすると、彼が存在するかどうかは別にして高笑いするのは神のほうだろう、という結語ですが、The Economistらしい表現ですね。

一寸気になったのは、自己犠牲の延長線上で自殺的な行為を「イスラム社会が勧めている」と言うような書き方がされていたことで、何もイスラム社会全体が自殺的行為を勧めているわけではないでしょう。このあたり、向こう二、三週間のLettersに注目でしょう。

Obiuaryは第一次大戦フランス歩兵の最後の生き残りが亡くなられたことを報じています。貧しいイタリア移民の息子が移民後一時イタリアにつくなど数奇な運命の下、フランスで最も注目される老人となったその生涯は「事実は小説より奇なり」を地で行っています。日本だと、大戦は異なりますが、漫画家の水木しげるさんが語り部としてのお役目を果たされていることに似ているかもしれません。