新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

そっちに振りますか

4月12日号の続きです。

Lettersに続くBriefingでは、サフラン革命とよばれた民主化運動が沈静化されてしまったミャンマーの近況が詳報されています。チベット問題に深入りせず、あえてそっちに振ったという感もなきにしもあらず、ですが。

Asiaでは北京オリンピック聖火リレーに絡み、各国でチベット支持派を恫喝したと伝えられる中国系活動家のことが敢えてクローズアップされてます。また、中台関係については中国当局が自国民に対して台湾を民主化のお手本にすることを望まないに違いない、という書き方ですが、果たして選挙で勝利した国民党に対して中国政府がどれだけ譲歩的な対応をとるのかという意味では興味のある報道です。日本の新聞は胡錦涛主席と蕭万長・台湾次期副総統が笑顔で会談したことについて伝えるばかりですが。日本の道路特定財源一般財源化問題の報道では、日本が先進国中GDPに占める税収比率が先進7ヶ国中最低であることを取り上げて、政府の立場を擁護するとも取れる論陣です。OECDの統計が参照されていますが、それによると確かにフランスとイタリアは40%強、日本は30%弱ということです(日本は税金が安い?)。アメリカでは大統領選挙とイラク問題(どちらも出口がはっきりしていません)、カリフォルニア州南部にあるソルトン海という湖の塩分汚染と環境悪化問題、Lexingtonでは移民の数を制限する政策のため、優秀な頭脳が他国へ取られてしまうとの懸念についての考察、となっています。

各国に存在する中国系移民の強すぎる愛国心発露と、チベット問題を取材しようとするジャーナリストへのさまざまな妨害行動に対する反意など、おそらくは自社が直接関与したことによると思われるのですが、結構ささくれだった表現があちこちに目立ちます。がしかし、敢えて中国批判の先頭に立たないあたりがThe Economistの老獪さ、と思えます。国際的には無名の湖についてなど、アメリカの国内問題にも鋭く突っ込んでいて、何もチベット問題への論評が特殊な視点に立ったものではないことが良くわかります。