新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

失われた10年の持つ意味

8月23日号後半です。

Economic focusでは、巷間言われていることではありますが、サブプライム後のアメリカは、日本のもと来た道をたどるのかという議論について非常にコンパクトにまとめた議論が載っています。まず土地や不動産への値上がり信仰がバブルを呼び、どこかで信用クランチが起きた時の対応についてですが、まずThe Economistは1991年段階の日本政府の対応は言われているほど間違ってもいなかったとのスタンスです。すなわち、バブルがはじけた後に遅滞なく金利を下げたこと。これは間違いなく正しい対応であった、これによって1994年までに景気後退は減速し、持ち直す気配も見せたとの整理です。このあたりは日本の経済誌も同様の見方をしていると思います。で、問題はそのあとですが、ちょっと持ち直した景気に「羹に懲りて膾を吹く」愚を犯し経済を失速させた、ちょうどそこにデフレがやってきた、というあたりも今となっては解釈に大きな差異はない話かと思います。で、肝心のアメリカ経済ですが、当時の日本に比べて金利は高いので、金融政策はまだ大きな余地を残しているものの、国民の貯蓄率が低いので財政政策には限界があるのでは、という書き方をしています。

http://www.economist.com/finance/displaystory.cfm?story_id=11964819

たしかにデフレはやってきたのですが、でも現象的には中国製の安い物品がどっと市場に入ってきて、100円ショップの隆盛や価格破壊など、民生に寄与する要素も多かったと思います。あれだけの変化をもたらした中国の存在に匹敵するものが、今のアメリカ経済を取り巻く環境にあるか、と言われればそこは疑問、と思ってしまいます。

結論的には私も「アメリカが日本の足跡を追うことはない」ほうに一票、という感じですかね。