新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

蓋棺の誉れ

1月3日号の、ObituaryではなくLexingtonですが、昨年クリスマスイブに亡くなったサミュエル・ハンチントン氏を評価する記事が載ってます。「文明の衝突」で予言された宗教に端を発する東西の対立が現実化した、とのスタンスで氏の洞察を高く持ち上げているのですが、対照的な例として冷戦後の平和を予想したフランシス・フクヤマ氏が名指しされているあたりにThe Economistらしさが出ていると思いました。

で、Middle East and Africaはイスラエルによるパレスチナ侵攻に関する記事の三連発です。The Economistは一貫して「パレスチナがかわいそう」的な報道とは一線を画しているのですが、「何が比例的か」、という囲み記事では戦争をめぐる国際法の考え方、すなわち開戦に必要な論拠の重さと戦勝に求められる成果の重さの違いによって見方が変わってくるとの分析を示していて大変興味深かったです。死者の数が少なくても、意図的に市民を狙ったハマスのロケット攻撃の非正当性は、市民を多く巻き込んでもできるだけ非戦闘員を巻き込まない努力をしているイスラエルの攻撃よりたちが悪い、という意見があるかと思えば武力で圧倒的な格差をつけられているハマスが領土回復を果たすには手段を選べない、という意見もあるわけで。

戦争をするな、もしくは平和が大事、との意見は確かに正論なのですが、融和策に対する回答として市民を標的にロケット攻撃を仕掛けてくる相手に対応しなければならないとなったとき、果たして人は何をするのでしょうか。流石のハンチントン氏もそこまでの答えは用意してくれなかったみたいですが。