新 The Economistを読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economistを読んでひとこと

二度目の登板の難しさ

1月10日号のBusinessでは、一度退いたカリスマCEOたちが自分の会社が不調となり、再登板する事例についての分析が面白かったです。パソコンメーカーのデルや証券取引情報のチャールズ・シュワブなど、会社に自分の名前を付けたかつてのヒーローが、株価低迷を機にトップに返り咲いたのですが、それがかならずしも成功をもたらすとは限らない、という話。例外はアップルのスティーブ・ジョブスである、としながらも、深堀した分析はアップルとその他の事例では必ずしも状況が共通でない部分が多いことがわかります。ひとつ、ジョブスは石もて追われるように解任され、その後再登板まで12年もアップルとは縁が切れていたことに対して、デルもシュワブも成功を手にトップを退き、その後比較的短い期間を経て再登板するまでの間、役員には名を連ねており決して会社を離れたわけではなかったこと。ふたつ、従って再登板当時のアップルの不振にはジョブスは直接の関係がなかったと言えるのに対し、デルもシュワブも直接・間接の責任を取る立場にずっと居続けたといえること。そんなふうに見てゆくと、たとえ過去に一度成功した経営者であったからといって、自分の会社がすぐダメになった場合の再登板は、もしかしたら傍目にみるよりもよほど難しいものなのかもしれませんね。

で、囲み記事にジョブスが健康を害している(珍しいタイプのすい臓がん)ことについての報告が載ったと思ったら、明日発売の1月17日号には6月まで健康管理休暇を取るとの記事が載るのだそうです(休暇の発表は現地時間の1月14日)。事情が事情だけに、「このまま戻れないんじゃないか」という観測もかなり強めに前面に出ていました。
今週号の囲み記事についても彼の健康や会社の先行き、さらにはデジタル業界にとってジョブスが必要な人間であることへの強い書き込みが目につきました。

世間では難しいとされる再登板を仕事の上ではなんとか乗り切った菜食主義者で仏教徒のジョブスにして、がんとの闘いにも臨まなくてはならないとは、二度目の登板とはなんと難しいものかと思わされます。